こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。
毎日「暑い〜』と何回言っているでしょうか•••笑
今回は親知らずについてお話したいと思います。
大人になりかけている時に生えてくる親知らず。ジンジンと歯茎を押すような痛みに、しばらく辛い思いをした方も多いのではないでしょうか?
状態によっては親知らずの放置は危険であるため、歯科医院で早めの対応をすることが大切です。親知らずの種類と生え方、放置によるリスクについて説明していきます。
▼親知らずの種類
親知らずとは、前歯から8番目に生える歯で、医学的には「第3臼歯」もしくは「智歯(ちし)」と呼ばれています。なぜ「親知らず」という名前が付いているのかご存知でしょうか?それは、大人になって親元を離れた年齢になり生えてくるため、親に知られることがなく生えてくるため、親に知られることなく生えてくる=「親知らず」と呼ばれているそうです。
親知らずは10歳になる頃に顎の骨の中で形が出来始め、18歳以降から生えてくるケースが多いとされていますが、20代を超えてから親知らずが生えてくるケースも少なくなく、生えてくる時期は人それぞれです。通常の永久歯は13〜15歳で生え揃いますが、先述した通り、親知らずは20歳前後で生えてきます。上下と左右の奥歯よりも奥に、合計4本生えてくると考えられています。しかし、時期同様に、本数も人それぞれであることが特徴です。全てのケースで4本生えるわけではありません。4本生えてきても、顎のスペースが小さいために埋まってしまい、目で確認できないケースもあれば、もともと2本しかない人もいます。
生え方や生える時期、抜歯をするべきかどうか、など人それぞれに違っているのが特徴です。
▽正常な親知らず(真っ直ぐに生えている)
親知らず以外の歯と同じように、垂直に生えています。
正常な親知らずは対合する歯(上なら下、下なら上)と噛み合っている状態です。
他の歯にダメージを与えず、噛み合わせも良い状態であれば、他の歯と同じ機能を果たし、口腔内にトラブルを起こすことは少ないと考えられています。
なので親知らずにむし歯や何か問題がない場合は、抜く必要はないと考えられます。しかし、親知らずが真っ直ぐに生えてくるケースは理想的ですが、実際は決して多くありません。
仮に問題なく生えてきても、成長や口腔環境の変化につれて移動する可能性がないとは言い切れないため、歯科医師に確認してもらうことをお勧めします。
▽親知らずの一部が歯肉から見える状態(横向き、または斜めに生えている)
顎が小さく、親知らずが生えるスペースがありません。
真っ直ぐに生えてこないため、目で確認できるのは一部分だけであるケースが多いです。この様なタイプではブラッシングがしづらくなることから、磨き残しが溜まり、むし歯や歯周病のリスクが高まってしまいます。横向きに生えている親知らずを放置しておいたために、親知らずの手前の歯に磨き残しが溜まってしまいむし歯になってしまう例もあります。親知らずが倒れていることから手前の歯との間にプラークが残り、むし歯になってしまうのです。この様な場合は、早くに親知らずを抜歯しておくことで、むし歯を防ぐことが出来ます。むし歯になっていないうちに、歯科医院に行くのがお勧めです。さらに、口腔内の汚れが引き金となり、炎症が起こることもあります。
親知らずの周辺の歯茎や口内の衛生状態が悪くなると、ストレスがかかった時や睡眠不足・体調不良の際に腫れたり痛みが出てくることもあります。
また、親知らずが正常な形で生えてこないと、噛み合わせや歯並びを悪くしてしまうリスクもあるため、歯科医師による適切な対応が必要です。
▽親知らずが歯茎の中に埋まっている(骨の中に埋まっている)
歯茎の中で横向きに倒れ、完全に埋まっている状態です。
「真っ直ぐに生えてくるタイプ」「横向き、または斜めに生えてくるタイプ」とは異なり、目で確認することは出来ません。
見た目では分かりませんが、レントゲン撮影をすると親知らずが埋まっているのが分かります。
むし歯や歯周病を引き起こすリスクはありませんが、「嚢胞(のうほう)」という骨の中に袋状の塊が出来る病変に気を付けなければなりません。嚢胞は顎の骨にある歯根に出来たり、舌や唇にも出来るものもあります。骨の圧迫したり溶かしたりするトラブルを生み出してしまいます。除去しなければならなくなる場合もあります。
▽逆向きに生えているタイプ
医学用語では「逆性埋没智歯」と呼ばれています。
口腔内には出てこないため、むし歯や歯周病のリスクを高める可能性は低いですが、骨の中に嚢胞を作ってしまうケースもあります。
もし親知らずが目に見えない状態でも、歯の奥や口内が痛んだ場合は、逆向きに生えている場合を想定し、歯科医院でレントゲンを取りましょう。
▼親知らずのトラブル
親知らずの種類でお話した通り、生え方によってリスクの大きさは変わってきます。また、ストレスや疲れなどで抵抗力・免疫力が落ちたり、ホルモンバランスが乱れたりすると、その影響が親知らずに現れやすいです。
親知らずによって痛みを感じる時、多くの方は「親知らずが歯茎から飛び出してくるから痛みが出る」「他の歯や歯茎、骨にダメージを与えるために痛くなる」と考えがちですが、痛みの原因は他の所にあります。親知らずによる口腔トラブルが痛みを起こしているのです。親知らずによる痛みには、「むし歯・歯周病」「智歯周囲炎」「歯性感染症」などがあります。
▽歯肉が腫れる
真っ直ぐに生えていない親知らずは、手前の歯肉を圧迫し歯肉炎を起こしやすくなります。
▽プラークが溜まりやすくなる
親知らずが生えてブラッシングがしづらくなり、間にプラークが溜まりやすくなり、歯肉炎を起こしやすくなります。
▽親知らずがむし歯になる
親知らずが生えて、磨き残しや汚れが残りやすく、またブラッシングが難しいため、プラークが蓄積し親知らずがむし歯になることがあります。
▽親知らずの手前の歯がむし歯になる
ブラッシングが難しいためプラークが蓄積し、親知らずと手前の歯がむし歯になることがあります。
▽歯周病になる
ブラッシングが難しいため歯肉炎から気付かないうちに歯周病になることがあります。
▽上の歯が伸び、下の歯茎を噛んでしまう
噛み合わせのない歯は伸びる性質があるため、上の親知らずの場合は下の歯肉に当たりり傷を作ってしまうことがあります。
▽骨の吸収が始まる(歯根吸収)
親知らずが横向きや斜めなど隣の歯の根っこを押すように生えていると、その根っこが溶けて短くなってしまうことがあります。また、親知らずが当たっている手前の歯の歯根吸収を引き起こしてしまう場合もあります。歯根吸収が進むと、親知らずだけでなく手前の歯の抜歯も必要になることがあります。
▽歯が前に倒され、歯並びや噛み合わせが悪くなる
真っ直ぐに生えていない親知らずに、手前の歯が押されて歯並びや噛み合わせが悪くなることがあります。
親知らずは生え方のよって適した対応が違ってくるため、自己判断せずに歯科医師に相談し、必要な治療を受けることがとても大切です。
正常に噛み合って何の問題もない親知らずであれば抜く必要はありません。しかし、存在するだけでトラブルを起こしているような場合は「親知らず」を抜いてその他の正常な歯の健康を維持した方が良い場合があります。親知らずの異常を放置していると、健康な隣の歯まで悪影響を受けて複数の歯の処置が必要になる場合もあります。一度でも痛みや腫れが起きたことがある親知らずは再発リスクが高く、放置しておいて良いことは一つもありません。
▼抜歯が必要なケース
「横向き、または斜めに生えている」「骨の中に埋まっている」親知らずには、抜歯が必要になる場合が多いです。
横向きや斜めに生えてくる親知らずはむし歯や歯周病、炎症のリスクを高め、歯茎に埋まっている親知らずは膿の袋を作るリスクがあるためです。
それ以外にも、「隣の歯との間に食べ物が詰まりやすい」「噛み合わせを悪くしている」などの問題が見られる場合には、抜歯が必要になるケースが多くなります。
▼抜歯が必要ないケース
「真っ直ぐに生えてくる親知らず」では、他の歯へのダメージが見られなければ、抜歯をする必要はありません。
また、「骨の中に埋まっている親知らず」でも以下の場合、抜歯が必要ない場合もあります。
・歯茎が覆い被さっていて、親知らずが全く見えない
・ブラッシングに困らず、磨き残しが残らない
・歯茎に痛みがなく、違和感もない
親知らずが生えてきたからといって必ずしも抜歯するべきではなく、場合によっては親知らずを残した方がいい場合もあります。
年齢を重ねたり歯を失った時に、入れ歯やブリッジの土台や移植歯として親知らずが役に立つためです。
▼抜歯の流れ
痛みが出ないよう麻酔をかけ歯茎の中に埋まっている場合は、歯茎を切開します。さらに真っ直ぐ生えていない親知らずは分割します。歯茎から取り出せる大きさになったら親知らずを抜きます。骨の治りを良くするために縫合します。縫合した糸は約1〜2週間後に糸抜きをします。
▼抜歯後の症状
抜歯後には「腫れ、痛み、口が開きにくい、喉が痛い」などの症状がしばらく続くことがあります。
下顎の骨の中には血管、神経が通っていて、親知らずはこれらの神経血管や舌の神経に近接しているため術後に下唇や舌の知覚異常を起こす可能性があります。何日も続く場合はご連絡ください。
上顎の親知らずは上顎洞副鼻腔に接しているため、抜歯の際に上顎洞と口腔が交通することがあります。
そのため血液、水、空気ばどが鼻に漏れたり、上顎洞に炎症が起こることがあります、交通した穴が小さく炎症を起こさなければ、穴は自然に塞がります。
抜歯後数日経っても鼻から水が漏れる、鼻が詰まるなどの症状が続く場合はご連絡ください。
▼抜歯後の注意事項
①お口をお水などで激しくゆすがないでください。
②当日は激しい運動や飲酒を避け、お風呂はシャワー程度にしてください。
③ガーゼは30分〜1時間程噛んでいてください。
④抜いた所を舌や指で触ると出血したり、感染する恐れがありますので刺激しないようにしてください。
⑤出血が続く場合は新しいガーゼ(清潔なティッシュ)に取り替え30分程しっかり噛んで様子をみてください。
⑥抜歯後、唾に多少血が滲むのは異常ではありません。
⑦麻酔の覚める時間は個人差があり、約2〜4時間位です。麻酔が切れるまで食事は十分に注意してください。(飲むことは大丈夫ですが、食べることはなるべく控えるようにしましょう。)
⑧歯磨きは抜歯した翌日から優しく(あるいは柔らかめの歯ブラシで)当てましょう。
⑨痛み止めと抗生剤が処方されます。抗生剤は必ず飲み切り、痛み止めは痛い時に飲んでください。痛みや腫れがあっても氷(保冷剤など)で冷やさないようにしてください。
親知らずが生えてきたらもちろんですが、生えていなくても痛みや病気、口腔環境へのダメージを防ぐためにも歯科医院でレントゲンを撮ってもらい確認しましょう!
不安がある方も是非、ご相談ください。
編集者 医療法人フォレスト 長野フォレスト歯科 理事長 藤森 林