こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。
食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋…。皆さんはどんな秋をお過ごしですか?
突如として訪れる歯の痛み。多くの人々が一度は経験したことがあるかと思います。朝起きたとき、何気なく食事をとったとき、甘いものを食べた瞬間など、その痛みは予期せずに私たちを襲ってきます。
そんな時、誰しもが思うのは「急いで歯医者に行きたい」ということだと思います。しかし、歯科医療では即時の診療はなかなか難しいものがあるのです。
「歯が痛くて痛くて、急患で歯科医院に行ったのに治療してくれなかった!」という経験をされた方は少なくはないかと思います。「痛いのに薬だけで帰された…」しかし、歯科医師の見解からするとすぐに治療をしないきちんとした理由があります。
もちろん、すぐに治療して治したい気持ちは山々です。
しかし治療を始めて患部に刺激を与えてしまうと患者さんによっては、あまりの痛みに気絶してしまう場合もあります。気絶まではしなくても、痛みでうずくまり体をおこせないまま…なんてこともあります。
どちらにしても痛いのです。でも、治療すると、もっと痛くなってしまうのです。
そして、お帰りになった後も残念ながらご自身の痛みのピークまでは痛みは続きます。
また、歯科治療は他の医療分野とは異なる独特の特性を持っています。例えば、一般的な内科の診察と比べると、歯科治療は非常に緻密な作業が必要とされるため、十分な時間と注意を要します。また、特定の機器や材料の使用が必要な場合も多く、それらは常に整然と準備されているわけではありません。
このような歯科医療の特性と、患者さんの期待や緊急性との間には、微妙なバランスが求められます。
今回は、歯に痛みが出て、急に歯医者に駆け込んだ時、なぜすぐに診てもらえないのか、その背後にある理由やシステムについて詳しく解説していきます。
目次
□すぐに治療をしない大切な理由
「歯が痛くて痛くて、急患で歯医者に行ったのに治療してくれなかった!」という話をたまに耳にします。
歯科医師の見解からするときちんとした理由があります。
まずは炎症を抑えてから適切な治療をするという選択をすることもあります。
今、無理に治療を進めてしまうと、余計に腫れる危険があります。また治りも遅くなる可能性があるからです。
「痛いですよね、でも今、無理に治療をすると余計に腫れてしまう危険があるので、本日は応急処置だけです。まずは炎症を抑えてから後日治療をしましょう。炎症と痛みを抑えるお薬を処方するので後日、いらっしゃって下さい。」
という説明をして、当院では患者さんに治療方針をご納得いただいた上で進めるようにしています。
まずは炎症を抑えるということをしっかり説明し、炎症と痛みを抑えるお薬を処方しています。
またお掃除してから治療に入る場合も同じように、すぐに治療をせず、歯のクリーニングをしてから治療に入る場合もあります。
むし歯も歯周病も感染症の一つですので、きれいなお口の状態で治療をするのが良いからです。
お口の中には成人で300~700種類の細菌が生息していると言われています。しかも数にすると多い方で6000億個、管理状態が悪い方では1兆個もの細菌がいると言われています。
このような状態で切開したり、歯を削ったりするとどんなリスクがあるかは想像しただけでも分かるかと思います。
これらの細菌は糖尿病や全身疾患のリスクを高め、心筋梗塞などのリスクも高めます。
できればきれいな口腔内の状態で治療をすべきとして、治療と清掃の優先順位を決定する際にお掃除をさせていただくことがあります。
患者さんにはしっかりと説明の上で治療を進めます。
歯の治療はきちんと説明をしないと患者さんは不安に思われることが多いです。できる限りコミュニケーションは大切に考えております。
ご要望やご相談がある際にはお気軽にスタッフまでお尋ねください。
スタッフ一同、ご質問やご不安なことに関しては積極的に分かりやすく丁寧に説明をするように心がけております。
□痛みがひどい時は応急処置だけ
歯が痛い、何とかしてほしい!という気持ちは痛いほど分かります。
私達も、患者さんの歯の痛みから少しでも開放してあげたい、早く治して差しあげたいという気持ちは常に持っています。
ではなぜ、お薬だけでお帰りいただくのかというと、むし歯などで歯茎や歯の根の先が腫れてしまっている状態で治療をすると、さらに悪化する可能性があるからです。
「歯が痛い」という状態はつまり歯茎が腫れているということです。その状態で治療をすると、さらに悪化する場合があります。
怪我をしている、腫れている状態のところを切ったり治療するというのは、結果として良くありませんし治りも遅くなります。
まずは応急処置だけをして痛み止めを処方し、腫れが引くのを待ちます。
後日また来院されてから、しっかりと治療するというのが通常の治療スキームです。
また、患者さんによっては歯石や歯垢がたまっている場合には歯石除去やクリーニングをしてから治療を開始するという場合もあります。
なぜなら、お口の中を治療するのであればやはりキレイな状態で治療した方が治りも早いからです。
一度治療した歯はほとんどが再発します。
残念ながら再生医療が進んでおりますが、歯は治療しても再生しません。
もちろん、日々の食事でほんの少し溶けた歯は自分の力で再石化し、もとの状態に戻ろうとしますし、フッ素化合物が入った歯みがき粉などは再石化を促進する手助けをします。
ですが、「歯の神経を抜いてしまった」や「深く削って詰め物をして銀歯にした」歯が元に戻ることはありません。
特に銀歯は被せたところからむし歯の再発は多くがあります。
銀歯にして10年持ってる!という人は、実は昔のタイプの身体に良くない銀歯の材質を使っている可能性が高いので、一度歯科医院で診てもらって必要であれば新しい銀歯に変えるか、密着性が高く再発リスクの少ない自費のものに変えるほうが歯のためには良いと思います。
□どのくらい経てば痛みは和らぐのか
炎症止めや痛み止めをお飲みいただいても、ご自身の痛みのピークまでは痛みが続きます。その後神経が死んでしまい、痛みが和らぎます。
人それぞれではありますが、神経が死ぬまで、3日~4日くらいです。
神経が死ぬと痛みは和らぎますが、そのままにしておくのは良くありません。
このまま放置してしまうと、今度は歯を支える骨が壊れていってしまうことになりかねません。
炎症や痛みが和らいだら、再び歯科医院へ行くことをおすすめ致します。
□歯科医院の予約システム
歯科医院への訪問は、多くの場合、事前の予約が必要です。では、なぜ予約がそれほど重要なのでしょうか。そして、一人ひとりの患者にどれほどの時間と手間がかかるのか。ここでは、歯医者の予約システムの背後にある理由を詳しく探ってみたいと思います。
・事前の予約の重要性
歯科治療は、他の多くの医療とは異なり、特定の機器や治療材料が必要となることが一般的です。治療計画によっては、準備や調整が求められる場合もあります。事前の予約を受け付けることで、歯科医師や歯科衛生士は、患者さんが訪れる前に必要な準備を整えることができます。
また、歯医者の診療時間は限られており、突然の患者の訪問に対応するのは困難です。予約を取ることで、診療の流れをスムーズに進めることが可能となり、無駄な待ち時間を減少させることができるのです。
・一人ひとりの患者さんへの手間と時間
歯科治療は、非常に緻密な作業が求められます。一つの治療が完了するまでの時間は、患者の症状や治療内容によって異なりますが、一般的な診察やクリーニングでも十分な時間を確保する必要があります。
例えば、むし歯治療では、正確な診断、適切な治療材料の選択、そして治療の手順を丁寧に行うためには時間がかかります。また、一人の患者さんの治療が終了した後も、診療室の清掃や機器の滅菌など、次の患者を迎え入れるための準備が必要となります。
このように、歯科医院での一つひとつの治療には多くの手間と時間がかかるため、予約システムの遵守が求められるのです。
□緊急事態と診療
歯の痛みや急なトラブルは予期せずに訪れるものです。緊急時の診療について、どのような取り扱いがなされているのか、また、予約済みの患者との兼ね合いはどのように行われているのかをご説明いたします。
・緊急時の診療の取り扱い
緊急事態とは、急激な痛みや怪我、折れた歯など、速やかな対応が求められるケースを指します。多くの歯科医院では、このような緊急事態に対応するための時間を診療スケジュールの中に確保しています。しかし、その時間は限られているため、緊急を要する患者が複数いる場合や、特に混雑する日時では十分な対応が難しくなることもあるというのが現実です。
さらに、緊急事態にも種類があり、それぞれの状況に応じた治療や手続きが必要です。例えば、歯が折れた場合、その原因や折れた範囲、そして患者さんの健康状態などを考慮して、適切な治療を選択する必要があります。
・他の予約患者さんとの兼ね合い
歯医者の診療は、予約を基本として行われています。緊急事態が発生した場合、その対応のために予約患者様の診療時間を変更することも考えられますが、これは医院側としては最後の手段です。
予約済みの患者様は、事前に治療計画を立てられていることが多く、そのプランに基づいて来院しているため、その予定を変更することは患者にとっても大きな負担となります。また、予約変更の際のコミュニケーションや調整も必要となり、これが診療の効率や流れを乱してしまう可能性もあります。信頼関係にも問題がでる可能性もあります。
そのため、多くの歯医者では、緊急事態に応じて迅速に対応すると同時に、予約患者様の診療スケジュールを守る努力をしています。
□歯科診療の特性
私達が歯科医院を訪れるとき、多くの人は「ただの診療」だと思いがちです。しかし、歯科診療の背後には、他の医療分野とは異なる独特の特性や工程が隠れています。その中で、特に緻密な作業の必要性や、機器や治療材料の準備にかかる時間について、詳しくお話していきます。
・緻密な作業の必要性
一言で歯科診療と言いますが、治療の種類はいくつかに分けることができます。むし歯、歯周病、その他と分けてみます。
むし歯治療をさらに分けると、表面のエナメル質にとどまった初期のむし歯。さらに内部の象牙質に達したむし歯。痛みが出る歯髄に達したむし歯。歯髄に達したむし歯は神経を抜く必要がありますがその治療を根管治療といいます。根管治療をした歯は被せ物を作る必要があり、削って型を取る治療と装着する治療とあります。
歯周病治療は全体的な歯周病の検査ののちに歯石の除去。さらに状態の悪い歯肉には歯周ポケットの奥まで清掃が必要ですし、その後さらに歯肉の検査があります。状態が改善しない場合は、お薬を併用して歯石取りを行う歯周内科という治療もあります。その後状態が落ち着けば定期検診になります。
その他の治療は矯正や顎関節症の治療、インプラント、入れ歯、かみ合わせなど多種多様にわたります。
この多くの種類の治療を行うためには物理的な事前の準備の他に、治療計画の作成といったもものあります。それぞれの作業は他の多くの医療分野とは異なり、非常に緻密な作業が求められます。歯は小さな部分でありながら、その中には複雑な神経や組織が存在し、微細な差異が治療結果に大きな影響を及ぼすことがあります。例えば、むし歯治療の際、歯の削り取りを行う場面では、僅かな1ミリ以下の違いが痛みの有無や治療の成功率を左右します。そのため、歯科医師や歯科衛生士は、高度な技術や集中力を要求される作業を日々行っています。
・機器や治療材料の準備時間
歯科診療には、特定の機器や治療材料が必要となることが多いです。これらの機器や材料は、使用後には厳格な滅菌処理が必要であり、次回の治療に備えて準備をする必要があります。また、患者さんごとの症状や治療内容によって必要な機器や材料が異なるため、それぞれの診療前に適切な準備を行うことが求められます。
このような準備は、時間と労力を要しますが、これによって安全かつ効果的な治療が実現されるのです。患者さんが感じる待ち時間の一因となることもあるかもしれませんが、それは高品質な治療を提供するための必要なプロセスなのです。
・患者さんとのコミュニケーションの大切さ
歯医者における治療は、技術だけでなく、患者さんとのコミュニケーションにも大きく依存しています。痛みや不快感を最小限に抑え、効果的な治療を提供するためには、患者さんの声をしっかりと捉えることが不可欠です。ここでは、予約時の情報提供や、患者の症状の正確な把握について、コミュニケーションの重要性を考えてみたいと思います。
□予約時やカウンセリングの際の正確な情報提供
予約をする時、またはカウンセリングの際患者さんは自身の症状や希望を正確に伝えることが求められます。これによって、歯医者は適切な時間や機器を確保することができ、効率的な治療が可能となります。例えば、「痛みがある」とだけ伝えるのではなく、「食事をとるときに特定の歯が痛む」と具体的に伝えることで、原因の特定や治療の方針を迅速に立てることができるのです。
・患者さんの症状や状態の把握
診療時には、歯医者と患者との間での緻密なコミュニケーションが不可欠です。痛みの程度や位置、それに伴う他の症状など、患者さんの感じることを正確に把握することで、より適切な治療を施すことができます。また、患者さん自身の治療に対する希望や不安も大切にされるべき情報です。これらを共有することで、患者さん中心の治療が実現されるのです。
コミュニケーションにおいて、患者さんや先生、スタッフも伝えきれずにいる面もあるかと思います。
患者さんからの疑問をしっかりと解消出来るよう、分かりやすい説明やコミュニケーションに努めています。
そして治療を始めるにあたって最も重要なのが診断です。診断には時間がかかるものもあります。
特に大切な診断は以下の4つになります。
・原因歯の特定
痛みのある歯がどの歯なのかを決定することは、予想外に難しいことがあります。わからないままに次々と抜髄すると、歯科医師も患者さんもどの歯が痛みの原因なのか分からなくなってしまいます。
・原因の特定
歯髄、根尖歯周組織、辺縁性歯周組織、あるいはそのほかに原因があるのかを特定しなくてはなりません。例えば、咬合が高いと、歯がしみると訴えることがあります。また、歯肉炎でも歯がしみるという場合があります。何となく変だ、違和感があるといったような弱い症状、たまにしか起こらない症状の場合には、原因の特定は困難を極めます。
例えば、むし歯がなく、深いポケットも見つからないが、患者さんは痛みを訴えている場合を考えてみたいと思います。このような場合、抜髄する必要があるのでしょうか…
以下の点を考慮し、なるべく抜髄を避けるようにするのが適切だと考えられます。
○慎重にむし歯の存在を調べます。
きれいに適合している詰め物下にむし歯、亀裂が見つかることもあります。
○隣在歯、対合歯も含め慎重に審査します。
歯肉炎、咬合も精査します。
○レントゲン写真で歯冠歯髄腔が細く狭くなっている場合には、歯髄に慢性的な刺激が加わっていることの根拠になります。
○咬合が高いときには、しみるということも多いです。
※「咬合が高い」=「噛み合わせが高い」
噛んだ時に他の歯よりも早く接触する状態のことをいいます。
○歯冠の亀裂の存在を注意深く調べます。
・歯を保存するか抜歯するか
その後の修復処置との関連で、どの程度その歯を残すことが重要であるか、総合的な診療計画に基づいて保存するか抜歯するかを決めなければなりません。
・治療方針の決定
全体的な治療計画のなかで、最善と思われる治療方針を決定します。
の分野では、抜髄、感染根管治療、外科的歯内療法、意図的再植などから選択することになります。
□歯の定期検診に行きましょう
ほとんどの歯医者さんでは、むし歯でなくても「定期検診」や「歯のクリーニング」を行なっております。
「最近、歯医者さんに行っていないな?」と、思われた方は定期検診に行きましょう。
「歯の定期検診とクリーニングをお願いしたい」と、言っていただけるとスムーズに予約がお取りできると思います。
歯のクリーニングは、歯科医師または歯の衛生部門のプロである歯科衛生士がクリーニング(スケーリング)を行ないます。
□まとめ
歯の痛みやトラブルは、突如として私たちの日常を乱すことがあります。そのような状況下で、緊急に歯科医院を訪れたいと思うのは自然なことかもしれません。しかし、歯科医院には様々な背景や制約があり、すぐに診療を受けることが難しい場面も存在します。このブログを通じて、その背後にある理由や歯科診療の特性を少しでも理解していただけたなら幸いです。
結局のところ、歯科医院での治療は予約制の医院が多いため患者さんも予約制について疑問を持たずに診察を受けています。
予約制という感覚が一般的である以上、予約時間を遅らせることができないという現実があります。急患を受け入れてしまうがために、その日のその後の患者さんの数人にご迷惑をかけることになってしまうため、無理のない時間で急患を受け入れるということになるのですが、全く会ったことがない方の急患というのは情報が何も無いため治療に時間がかかることが多いです。これが定期的な歯科検診に通っている方の場合は過去の診療情報がありますし、検査結果のデータもあるためある程度状態の予測ができます。予測がつく治療であれば時間の見通しもできるため少し無理をしてでも治療を受け入れることができます。
ですのでもし急患対応をしてもらう方法があるとすれば、普段から歯科医院に定期的な検診で通っているかかりつけ歯科を見つけておくというのが良いと思います。長い期間をかけて人間関係ができているというのも安心ですし、定期的に状態を確認しておけば、強い症状が出る前に計画的な治療ができます。
過去に急な強い症状で困った経験がある方にはぜひかかりつけの歯科医院を作っておくことをおすすめいたします。
一番良いのは、日頃から歯のケアや予防歯科を心がけていただくと、「急にとても痛い・すごい痛い」を防ぐことができると思います。
日々を過ごす中で、もし万が一「急に痛い・辛い」がお有りの際は、ご相談ください。
まずは電話などで状況を説明していただき、ご来院いただけたらと思います。