こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。
秋から冬へと変わる時期。衣服をこまめに調整しながら、これから一段と寒くなる季節に負けず、元気に過ごしたいですね。
普段、お子さんの様子を見ていると、食事の時にうまく噛めない、飲み込めない、喋る時にうまく発音できない、口が常に開いている、寝ている時にいびきをかく、指しゃぶりがやめられない、爪をかむ、舌をかんでいる、歯並びが悪い…など言われてみたら気づくことはありませんか?
これらに当てはまることがあれば、「口腔機能発達不全症」の可能性があるかもしれません。
この「口腔機能発達不全症」という病名は、あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、15歳未満の小児で、生まれつき病気ではないのに、お子さんのお口の機能が十分に発達しなかったり、上手く使えなかったりする状態のこととを言います。
つまり食べる、話すなどのお口の機能が十分に発達していない状態です。
小児期での『食べる』『飲み込む』『話す』『鼻で呼吸できる』などの口腔機能の発達・発育不足の状態は「口腔機能発達不全症」と診断され、その数が年々増えていると言われています。
口腔機能発達不全症は、放置すると身体の成長や言葉の遅れといった問題を引き起こす可能性があります。むし歯や歯周病ほど知られてはいませんが、お子さんの健康に関係する重要な問題なのです。
お口の機能が十分に発達しないと、食べ物がうまく食べられず、栄養不足や成長の遅れ、免疫力の低下を招いてしまいます。
口腔機能発達不全症は、大人になってからでの改善が難しいため、早めに見つけて癖の修正や治療をしてあげることが大切です。
機能や環境の育成は、将来の「健康なからだつくり」に大きく関与します。
そこでその対応が厚労省より提唱され、当院ではそのガイドラインのもと小児期のサポートに取り組んでいます。
今回はこの「口腔機能発達不全症」について詳しくお話したいと思います。
目次
◎小児口腔機能不全症とは
口腔機能発達不全症とは、2018年に保険診療で認められた小児歯科分野の新しい病名です。似ている病名に”口腔機能低下症”がありますが、これは中高年のお口の機能に関する病名です。どちらも、お口の機能がうまく働いていない状態のことを指しています。
現在、急速な高齢化によって、高齢者のお口の機能(食べる、話す、飲み込むなど)の低下が問題となっています。小児期に正常なお口の機能が獲得できないまま、成人期を過ごし、そのまま高齢者となると、機能の低下に拍車がかかるとされています。
口腔機能発達不全症は、病気というと身構えてしまいますが、本人や保護者も気づいていないことが多いです。例えば、”指しゃぶりがある”、”お口が常にぽかんと開いている”、”爪噛みがある”などは、口腔機能発達不全症を診断するうえでの確認項目です。統計的には、だいたい3~5割の子ども達にみられるといわれており、ごく身近な存在なのです。
原因となる口腔疾患が無いにもかかわらず『食べる機能』『話す機能』『その他の口腔機能』が十分に発達していないか、正常に機能獲得ができていない状態をいいます。よく見られる症状としては、咀嚼や嚥下がうまくできない、構音の異常、口呼吸などです。
本人には自覚症状があまりない場合が多く、一緒に生活されているご家族や周りの方が気付いて医師に相談されることが多い疾患です。
近年、小児口腔機能不全症の小児が増えています。早い段階から気をつけておくことで、歯並びが悪くなる原因となる、舌や唇の癖の改善にもつながります。
お子さんのお口ぽかんが気になっておられる方は、お気軽にご相談ください。
また日本歯科医学会では、口腔機能発達不全症を以下のように定義づけしています。
『食べる機能』・『話す機能』その他の機能が十分に発達していないか正常に機能獲得が出来ておらず明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく口腔機能の定型発達において個人因子あるいは環境因子に専門的関与が必要な状態。
お子さんのむし歯の本数は年々減少しており12歳児の平均むし歯本数も0.2本と非常に少なくなりました。それに対し、不正咬合は約6割にも達するといわれ、それ以上ではないかとの報告もあるそうです。
お子さんの咬合の不正は口腔機能発達不全症という病気と強く関わりを持ちます。
この口腔機能発達不全症を放っておくと、下記の様なトラブルを引き起こす恐れがあります。困ったことに成長後(13歳以降)の改善は望めないので、これもまた「むし歯」や「歯周病」と同様に『歯並び』の予防が強く求められる大事なポイントだと考えられます。
当院では、新たなトラブルでもあるこの口腔機能発達不全を予防するという観点に立ち、お子さんは勿論のこと保護者の方に対しても様々な情報提供を行っております。
◎口腔機能発達不全症チェック
口腔に関わる基本機能には、生きて行く上で欠かすことができない『食べる』や『呼吸する』といった働きがあります。また、『話す』や『表情を作る』という人として欠くことができないコミュニケーションにも深い関わり合いを持っています。
考えてみると、本来私たち人間は完璧とは行かずともそれなりに正しいとされる歯並びになるようにできているはずです。それを阻害する要素(悪いお口の癖)が多いことで下記の様な基本機能にトラブルが発現すると言われています。
口腔機能発達不全症のチェック項目
〜お子さんのこんな症状に心当たりはありませんか?〜
・口をぽかんと開けている
・歯並びが悪い
・目に力がなく、口がへの字、顔にしまりがない
・姿勢が悪い
・唇が厚ぼったい
・食べるのが速すぎる。遅すぎる
・食べ物がうまく噛めない・飲み込めない
・食べ物を丸飲みしている・食べこぼしが多い
・鼻呼吸ではなく、口呼吸をしている
・いびきをよくかく
・滑舌がよくない
・発音がはっきりしない、言葉の発達が遅い
・舌が短くて、舌を突き出した際に先端がくぼむ
・睡眠時にいびきがある
・むし歯がある
・肥満または痩せがある
・指しゃぶり、唇を噛む等の癖がある
上記のような症状は、実はお口を上手に使えていないことが原因となる可能性があります。 また、小さなお子さんの治療時に歯科医師が気付く点が多々あります。歯並びの悪いお子さんが増えてきてるのです。
お口を使って人間は食事をすることは、当たり前のことではありますが、その当たり前のことは勝手に身に付くと考えている方はいらっしゃいませんか?
多くの方々がそうお考えかと思いますが、実はこの当たり前は、当たり前でないのです。
お口の使い方は、乳児期の哺乳やその後の離乳食の時期、それから普通の食事へと段階を経て徐々に身に付くものと考えられています。残念ながらその時期その時期の食事の取り方によっては本来獲得すべき上手なお口の使い方が身につかないまま成長してしまうこともあり得るのです。
そういった上手にお口が使えない症状を口腔機能発達不全症と称し、2018年度より新たな病気の一つとして認知され始めました。
◎小児口腔機能不全症の治療には保険が適用されます
近年、小児口腔機能不全症の小児が増加傾向にあり、2018年から小児口腔機能不全症の治療には保険が適用されるようになりました。
咀嚼、嚥下機能(噛む、飲み込む)もしくは構音機能が十分に発達していない、または正常に獲得できていない15歳未満の小児に対しては保険の範囲内で治療が行えます。
※検査項目があり、決められた数以上該当する必要があります。
治療内容としては、口呼吸、滑舌、咀嚼嚥下の仕方などに改善が必要なお子様には、簡単なお口の体操をしたり、口輪筋(口の周りの筋肉)を鍛えるトレーニングを行います。
治療に痛みなどはありませんので、小さなお子様でも取り組みやすいです。口腔機能のトレーニングは矯正治療ではありませんので、歯並びをきれいにすることはできませんが、お子様が小さな内から気をつけておくことで、歯並びが悪くなる原因となる、舌や唇の癖の改善にもつながります。
◎口腔機能発達不全症の悪影響
口腔機能発達不全症に気が付かずに放置してしまい、何らかの行動を起こさなかった場合に、下記の様な悪影響が長期に渡り生じてくる恐れがあるといわれております。
しかも残念なことに、ひとたびそのような状況のまま成長をしてしまうと改善は思うように行きませんし、根本的な問題は残ってますので成長後(おおむね15歳以降)にいくら矯正をして歯並びを改善させたとしても後戻りと言って元に戻ってしまうことまで生じてしまうのです。
○歯並びが悪くなる
顎が十分に発達しないことで歯並びが悪くなってしまいます。
我々の顎は、お口周辺の筋肉の絶妙なるバランスや噛むことを繰り返すことで加わる適正な力によって上手く成長するものです。
口腔機能発達不全症の場合には、顎の適正なる成長を促さない恐れがあり顎が小さいままとなりますので、結果的に歯並びが悪くなるといわれます。
○本来の鼻呼吸が思うようにできない
顎の成長不足により本来の空気の通り道である鼻腔や気道が狭くなり呼吸がし辛くなってしまいます。
上顎への適切なる刺激不足により、空気の通り道である鼻腔や気道が狭くなり、本来の鼻呼吸がしにくくなり口呼吸に頼るようになります。
○姿勢が悪くなってしまう
鼻腔・気道が狭くなると、どうしてもそれを補うために頭を前に出した猫背の姿勢をとり口呼吸をするようになってしまいます。
○顔が長く見えるようになる
顎の成長不足で鼻下部が発達せず、顔が上下に長くなるといわれています。
顎の骨部分は鼻から下の顔面のほぼ半分を占めます。顎が成長不足に陥ると顔の適度なる膨らみが獲得できず、逆に上下に長くなります。
〜取り返しが付かなくなる前に〜
口腔機能発達不全症は何らかの手を打たないと上記のような症状を悪化させてしまいます。
骨格的な異常はこの時期にしか対応出来ず、成人になってから悔やんでも外科手術でしか対応が出来なくなってしまうのです。
(歯の移動だけの矯正治療では改善は無理なのです…)
呼吸が思うように行かずに慢性的な酸素不足に陥れば、集中力の低下や姿勢の悪化の定着など将来的に多くの禍根を残すことにもなりかねません。病気の原因になってしまったり、勉強や仕事などのパフォーマンスに悪影響を与え続けてしまうのです。
加えてそのお子さんがいつの日にか高齢期に差し掛かった時に、自力での食事が難しくなる口腔機能低下症になるリスクが高まります。小児期の口腔機能発達不全は実は生涯に渡って悪影響を及ぼす意味合いが秘められていると言っても過言ではありません。
◎3つの口腔機能発達不全症と検査方法
診断の際には日本歯科医学会「小児の口腔機能発達評価マニュアル」にある「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」に示されているチェック項目を使用します。検査では、保護者の方からの聞き取りのほか、かみ合わせや呼吸の状態、歯並びやのどの形態、口を閉じる力や舌の力の測定を行います。
基本的な流れとしては、生活指導によって生活や食べ方を見直しながら、問題があった形態や機能に対する対応を進めていきます。
○食べる機能•••食事がうまくできない状態です。
食べる機能は、咀嚼機能(食べ物を細かくなるまでよくかめること)・嚥下機能(咀嚼したものをきちんと飲み込めること)・食行動(食事の内容や回数、量など)について評価していきます。
赤ちゃんの場合は母乳やミルクをうまく飲めない、幼児の場合は食べ物がうまく食べられない・飲み込めない・よく噛まずに丸呑みするなどの症状が現れます。
また、食事に時間がかかる場合は、虫歯や歯並びの悪さなど、お口の中の状態が原因である可能性もあります。
・食べる機能発達不全の検査方法
授乳期の赤ちゃんは歯・唇・歯ぐき・舌などの形や動きを観察し、授乳の時間や回数、量をチェックします。
離乳後は実際に食事をしてもらい、舌の動きや噛み方、飲み込み方を観察します。
・咀嚼機能の評価:歯の生え方、歯並び、噛み合わせ、虫歯の有無や程度、食べ物をモグモグ噛んでいる時間の長さ、片側ばかりで咀嚼していないかなどを確認します。
・嚥下機能の評価:飲み込むときに舌がでてくるか(舌突出癖:悪い癖の1つとされています)を確認します。
・食行動の評価:哺乳量や食べる量、食事の回数が多すぎたり少なすぎたり、ムラがないかを確認します。
○話す機能•••年齢に合った正しい発音ができていないことを指します。
話す機能は、構音(話し言葉を発生させる機能)障害、唇の閉鎖ができるか、お口の癖、舌小帯(舌の裏側にある筋)の異常はないかの4つの項目について評価していきます。
・構音障害:舌小帯が異常に短い(舌小帯短縮)によるものと、唇が閉じていない(口唇閉鎖不全)あるいはお口の癖(口腔習癖)によって構音に関係しているものが対象になります。発音が完成する、5歳以降に評価します。
例えば、唇がうまく閉じられず、言葉がはっきりしないなどといった症状です。この場合の原因は、お口周りの筋肉の問題、鼻の病気などが挙げられます。
・話す機能発達不全の検査方法
授乳期の赤ちゃんの場合、唇が正しく閉じられるか確認します。離乳後はそれに加えて、舌の裏側にある舌小帯(ぜつしょうたい)が短かすぎないかチェックします。舌小帯が短すぎると舌の動きが悪くなることがあるからです。
また「パ」「タ」「カ」「ラ」「サ」行の発音をチェックし、言い間違えがないか、音がはっきり出ているかを検査します。
・口唇閉鎖不全:いわゆる普段お口がポカンを開いている状態のことを言います。3歳以降に評価します。
・口腔習癖:お口に関連する癖のことをいいます。例えば、指しゃぶり、爪噛み、唇を吸う癖、舌を前に出す癖などがあります。こちらも、3歳以降になってもあるかどうか評価します。
・舌小帯の異常:舌小帯が短いために、舌がうまく動かせない、舌をベェーと前へ出した時ハート状になるといった症状があるかどうか評価します。
○その他の機能
その他、口腔機能に関連する項目としては体格があります。痩せすぎていないか、太っていないかを身長と体重から評価していきます。
また、普段、鼻ではなく口呼吸していないか、お口の奥にある扁桃が腫れていないか、寝ているときにいびきをかいていないかも確認していきます。
口呼吸の有無や頻度をチェックします。これに加え、身長や体重を測定し、カウプ指数(発育状態の指標)やローレル指数(肥満の指標)などを用いて、発育の状態を確認します。
◎口腔機能発達不全症の病態
「食べる機能」「話す機能」「その他機能」が十分に発達していないか、正常な機能獲得ができておらず、摂食機能障害の明らかな原因疾患がなく、口腔の機能の定型発達において個人的因子あるいは環境因子に専門的な関与が必要な状態とされています。
発達不全といっても機能的に全然働いていないわけではなく、幼児期・学童時期の右上がりの傾斜が少し低く、機能獲得がやや遅れている状態です。
しかしながら、たとえ遅れていても、早期に発見して良いタイミングで介入すれば軌道修正ができ、今後の発達が見込まれます。
この疾患の対象が15歳未満であることの理由もここにあります。
発見が早いほうが軌道修正しやすいため、検診のたびに口腔の機能を診ることをルーティンワークにすることが求められます。
お子さんがいらっしゃる御家庭の多くの皆さんにとって、この口腔機能発達不全症はおそらく聞き慣れない言葉であるかと思います。口腔機能発達不全症は、最近注目されてきている小児の新たな問題です。そもそも口腔機能発達不全は、乳児の頃からの授乳の仕方や、離乳食の与え方、食べさせる時の姿勢や普段の生活の中でのお子さんの遊ばせ方等、様々な要因が絡み合って起きうる発育不全だと言われています。
◎口腔機能発達不全症の診断及び治療
15歳未満の小児において、口腔機能発達不全症と診断するには、確認する項目があります。それは、食べる機能、話す機能、その他の機能です。それぞれの項目についてお子さんや保護者に問診を行いチェックしていきます。そして、お口の中やお口周りの写真を撮ります。検査の結果、口腔機能発達不全症と診断した場合は、管理計画書を作成します。治療はその計画書に則って訓練・指導を行っていくことになります。この時に、口腔機能の発達不全の原因が、お口が原因ではなく、医科的疾患の可能性がある場合には、専門の病院へ紹介し、そちらで治療を受けていただくことになります。
訓練・指導を開始してからは、月1回程度来院し、指導と状態の評価を行います。訓練や食事環境の改善を行うのは主に家で行うことになりますので、お子さん本人のモチベーションと保護者の理解と協力が不可欠になります。訓練はダラダラと続けるのではなく、口腔機能の改善がみられるかどうかを評価し、改善が見られる場合には訓練の終了となりますが、引き続き治療が必要な時は管理計画の再立案となります。治療が思うように進まない時は中止となることもあります。
1)歯の萌出遅延 歯がなかなか生えない
歯が生えるのが、乳歯で6ヶ月以上、永久歯で1年以上遅い場合は、口腔機能発達不全症となる可能性があるため、保護者の方と歯科医師とで相談し、何らかの対応をとります。
2)食の問題 食べる量にばらつき、強い偏食、小食、食べるのに時間がかかる
哺乳量や食べる量、回数にばらつきがあったり、偏食で同じものだけを食べたり、あるいは小食で体重が増えない、食べるのに時間が長くかかることがあると、口腔機能の発達に悪影響となります。
飲み込む機能(嚥下機能)、大きいむし歯、口の乾燥(ドライマウス)が原因であれば、これらを改善するため、治療していきます。
3)口呼吸(口唇閉鎖不全症) いつも口をポカンと開けている
口呼吸をしていると、かみ合わせや歯並びが悪くなりがちなだけでなく、大人になってからの睡眠時無呼吸症候群の要因にもなります。歯科医院や自宅でトレーニングを行い、改善を目指します。
4)口腔習癖 指しゃぶりが止められない
指しゃぶり、つめ咬みといった癖は、口周囲の筋肉に悪影響を及ぼします。その結果、連鎖的に問題が起こる傾向が見られ、指しゃぶりが口呼吸、歯並びの悪化、発音障害、低位舌、いびき、睡眠時無呼吸症候群へとつながっていくこともあります。悪循環は早めに断ち切ることが大切です。
指しゃぶりは本人にとって癒しの作用もあるため、4歳頃に心理面や生活リズムを整えることで、自然に止めるよう促します。永久歯が生えてきても癖が続いていると悪影響を避けられないため、本人に自覚してもらい、歯科医院にてトレーニングを行うことで改善を試みます。
主な口腔習癖(こうくうしゅうへき)
指しゃぶり/おしゃぶりの常用/タオルしゃぶり/つめ咬み/唇をかむ・吸う/舌を前に出す/飲み込む時に舌を前に出す/低位舌/頬杖 など。
5)発音(構音)障害 ことばがうまく聞き取れない
発音障害があると、ことば通りの音がうまく発音できず、言いたいことが相手によく伝わらなかったり、周囲とのコミュニケーションに支障をきたしたりします。
歯科医師・歯科衛生士のもとで発音訓練を行うほか、舌小帯(ぜつしょうたい)が短い場合は切除することもあります。舌小帯は舌の裏側についているヒダで、これが短いせいで発音しづらいのであれば(舌小帯短縮症)、切ることで改善します。
6)いびき、睡眠時無呼吸症候群 いびきがひどい
鼻づまり、口呼吸、扁桃肥大などは、いびき、睡眠時無呼吸症候群の発症に関与していると考えられます。さらに、小児のいびき、睡眠時無呼吸症候群は歯並びに悪影響を与えることがあり、大人になってからの睡眠時無呼吸症候群の発症要因となるため、早期の改善が必要です。
治療では、口のトレーニング、矯正治療(床矯正)、などを行います。
◎治療のゴール
口腔機能発達不全症のゴールは、きれいな歯並びや正常な噛み合わせを獲得することではありません。正しい咀嚼・嚥下・呼吸を習得し、「食べる機能」と「話す機能」を十分に発達させることにあります。
治療のゴールは、個人に合わせて設定することが大切です。指導や訓練によって必ず完全に治るとは限りませんが、口腔機能が向上し、さらにお子さんが成長・発達することも伴って改善していくことを目指しています。少しでも良い方向へ持っていけるよう、歯科医師・歯科衛生士と保護者が協力して行うことが大切です。
◎口唇閉鎖力を鍛えられるトレーニングの例
・指で唇の周りを軽くつまんで上下に動かす。
・ストローや割り箸などを唇で挟んで、落とさないようにキープする
・紙風船・吹き戻し・笛ラムネを膨らませたり、ふいて遊んでみましょう。
最近では口笛が吹けない方が多くなっており、それだけ口唇閉鎖力が弱まってると考えられます。
遊びの延長で鍛えられるので、気軽に挑戦してみてください。トレーニングの方法や回数は歯科医師のアドバイスを受けるようにし、無理のない範囲で行うことが大切です。
・あいうべ体操(唇、舌の筋トレで鼻呼吸習慣の獲得!)
口腔筋機能向上のため、“あいうべ体操”を一日 30 回行ってください。
お子様だけでなく、保護者の方も一緒に行います。コツはハッキリ、大きく行うことです。「ベ~」のあと、元に戻った舌の位置が本来正常な舌の位置です。
・夕食後の手軽な咀嚼力筋トレに「ガムトレーニング」
食後や装置を入れていない時にガムを噛んでください 。 1 回 20 分目標 550 回噛む言われています。奥歯を意識して左右均等に噛みます。お勧めのガムはう蝕予防効果があるガムです。
・うがいの練習
簡単にできてしまいそうな「うがい」ですが、実はぶくぶくができないお子さんが増えてきているといわれています。気軽にチャレンジしてみてください。
①3歳になったら、うがいの練習を始めましょう。
口の中に水をためて、数秒間そのままキープしてからお口を出しましょう。(口からこぼれないように注意です!)
②お口の中でぶくぶくしてみましょう
①ができるようになったら、ぶくぶくしてみましょう。
お水がためられるようになってきたら、ほっぺたをぶくぶくしてみましょう。
上手になってきたら左右のほっぺたや上下のくちびるで、ぶくぶくに挑戦してみましょう。
③水を口にいれてから、上を向いてお口を開けてガラガラとうがいをしてみましょう。
ガラガラを途中で止めて鼻で呼吸を3回してみましょう。
◎まとめ
今回は、小児の口腔機能発達不全症についてお話いたしました。歯並びや耳鼻科疾患とも関係しているため、矯正歯科や耳鼻咽喉科とも連携して治療をしていくことがあります。
口腔機能発達不全症の治療のゴールは、きれいな歯並びや正常な噛み合わせを獲得することではありません。正しい咀嚼・嚥下・呼吸を習得し、『食べる機能』と『話す機能』を十分に発達させることにあるのです。治療をすることで、発育に問題のある部分を正常に戻しながら、バランスの取れた顔貌と正常な歯並びに導き、お口を骨格から改善することができるのです。指導や訓練によって必ず治るとは限りませんが、口腔機能が向上し、さらにお子さんが成長・発達することも伴って改善していくことを目指します。少しでも良い方向へ持っていけるよう、歯科医師・歯科衛生士と保護者の方々が協力して行うことが大切です。
治療は、歯科医院と自宅でのトレーニングを組み合わせて行うのが一般的です。治療開始後は月1回のペースで歯科医院を受診し、トレーニングがどの程度行えているか、お口の機能の変化を確認します。そして今後の課題や自宅での取り組み方など、相談しながら進めていきます。治療はお子さんだけの頑張りだけでなく、ご家族の理解と協力が必要なのです。
今回は、お口の機能がうまく使えない状態である口腔機能発達不全症について解説しました。口腔機能発達不全症は、口呼吸や指しゃぶり、舌の癖が原因となっていることもあります。大人になってからの治療は困難になることが多いため、早めの対処が重要です。
お子さんのお口の機能に気になることがあれば、是非ご相談ください。
編集者 医療法人フォレスト 長野フォレスト歯科 理事長 藤森 林