歯の豆知識

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皆さん知っていますか?人生100年時代に、歯の平均寿命はまさかの60年!?

こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。

春らしい陽気になってきましたね。

しかし朝晩は冷え、寒さと暖かさが入り混じる毎日が続いていますが、体調など崩されてはいませんか?

いきなりですが、皆さんは8020運動(ハチマルニイマルうんどう)をご存知ですか?8020運動とは、80歳になっても自分の歯を20本以上持ち続けようという運動です。愛知県などで行われた疫学調査の結果をもとに厚生労働省と日本歯科医師会が提唱し、開始されました。

8020運動がスタートした平成元年当時の平均寿命は、男性が75.9歳、女性が81.8歳でした。つまり8020運動は「20本以上の歯を一生涯持ち続ける」ことを目標に据えたものと考えられます。しかし現在の平均寿命は男女ともに80歳を大きく超えており、より健康な高齢期を過ごすための運動として「8020運動」という言葉が使われる機会が増えてきました。

歯は一生使えるものと思われがちですが、実際には加齢や生活習慣によってその本数は減少していきます。

今ある自分の歯は、自分の生きる生涯、共存するものと思っていませんか?
永久歯が生え始める6歳頃から約75年は保たせなくてはなりません。簡単なことではありませんね。

基本的なことから言うと、通常、永久歯は上に14本、下に14本の合計28本あります。
この28本の歯を生涯、無傷で保たせることは至難の技です。
歯は、子供の頃に生えた時が一番むし歯になりやすく、一番むし歯の進行スピードが早いものです。
自分で上手く歯磨きもできないし、中には歯磨き嫌いなお子さんもいるかと思います。
そんなお子さんに「むし歯になったら大変だよ!」と話してもなかなか効果は薄いですよね・・・。
歯医者に行くとなると痛い思いをしますし、嫌だと大泣きしてしまい、保護者の方も精根尽きて結局途中でフェードアウトしてしまうなんてこともあるかもしれません。とても悲しい話です。
一本や二本、歯を失っても大丈夫でしょ?と考える人もいるかもしれませんが、本当にそうなのでしょうか?

歯を失う主な原因はむし歯や歯周病ですが、喫煙や食生活といった日常の習慣も影響します。

今回は、健康な歯の平均寿命や年齢別の歯の減少傾向を解説し、歯を守るための具体的なポイントについて解説したいと思います。

■日本人の歯の寿命

日本人の平均寿命は女性が87歳、男性が81歳と日本が世界でも長寿の国であることは耳にしたことがあると思います。

そして、この平均寿命というものは歯においても算出されています。

厚生労働省の調査によると、歯の平均寿命は約50年~65年だそうです。

その中でも「奥歯の寿命」が最も短く、前歯よりも10年以上も早く抜けてしまいます。逆に最も寿命が長い歯が男性で66.7年、女性で66.2年です。

人間の寿命と比べてみると、歯の寿命が20~30年も短いことが分かるかと思います。これでは、老後にご自身の歯で食事をすることができませんよね。

ご自身の歯で食事をしたり、笑顔で過ごすために、今の健康のうちからできることは何があると思いますか?

人の命に限りがあるように、歯にも、寿命(歯を保てなくなるまでの期間)があります。

歯周病をはじめとして、むし歯・歯根破折(歯の根が割れたり、ひびが入ったりすること)など、歯を失う原因は様々です。

原因は色々ありますが、しっかりケアを継続することで、歯の平均寿命を延ばすことが可能です。

人生50年と言われれば、大半の人が歯のことを心配せずに済みますよね。しかし人生80年ともなれば、歯を失うかもしれないという不安を持ちながら、人生の後半を過ごしていかなくてはなりません。年を取ると入れ歯が当たり前と思う方もいらっしゃるかもしれません。

いろいろなデータを見ると、80歳で20本以上の歯が残っている人の割合は10%強、残っている歯の数が7本程度です。残りの人生はせいぜい10年、歯に関して特に不はないと思える人は、結局はほんの僅かな人だということです。この厳しい現実を、できるだけ若いうちから認識していただければと思います。

ただ、健康志向の高まりによって歯の生存率は年々改善される傾向にあります。今では歯磨きの習慣は完全に定着し、ほとんどの歯に治療した痕跡が見られるようになりました。しかし、しっかりと歯の治療をしたにもかかわらず、今も昔もむし歯や歯周病によって多くの歯を失っています。

□歯の寿命を短くする4つの要因

①歯周病

歯周病とは、歯の周りで繁殖した歯周病菌が歯茎にダメージを与え、やがて歯を支える歯槽骨を溶かす病気です。歯周病は軽度・中度・重度と3つの段階にわかれ、重症化するまでは自覚症状がほぼ見られないこともあります。

歯周病が重度にまで達すると、歯を支える力が失われるため、少しの衝撃でも歯がグラグラと動くことがあります。咀嚼した際の衝撃や、舌で歯を触ったときの勢いで歯が抜けてしまうこともあるのです。ここまで進行すると治療も困難になり、仕方なく抜歯に追い込まれる可能性が高いです。

重度の歯周病になると、歯がプラプラと動き、歯を舌で触っただけでも抜けてしまいそうなほどになります。
その状態になってしまったら、もう歯を残しておくことは難しいでしょう。物をしっかり噛んで食べることも難しくなってきます。
歯周病の怖いところは、「痛みなく進行してしまう」ことにあります。
口臭が気になる、最近歯茎から出血して気になるなどの症状を感じ、歯科医院を受診すると重度歯周病を患っていて、抜歯をするしかなかったということはよくあります。
また、歯を失う原因として、全体の40%を占めて歯周病が1位に挙げられます。
若年性の歯周病や全身疾患からくる歯周病もあり、病態は様々ではありますが、多くの場合40代から徐々に罹患率が上がり、年齢を増すごとに増えていく特徴もあります。

その他、親知らず、矯正治療を行うにあたっての便宜的な抜歯などの場合もあるのでご注意ください。
抜歯をしなくてはいけなくなるケースも人それぞれ、歯それぞれだとは思います。
しっかり歯科医院に通院していて、定期検診に通っていてもなお、抜歯に至ってしまったケースもあると思います。

②むし歯

むし歯が重症化した場合、有効な治療法は抜歯に限定されてしまいます。むし歯は歯周病と比べると痛みなどの自覚症状が出やすいものの、強い痛みを感じるようになったあとは治療の内容が重くなり、抜歯を余儀なくされることも多いため注意が必要です。

抜歯せずに治療できたとしても、詰め物の範囲が広ければもとの歯の多くを失ってしまいます。むし歯を初期段階で発見・治療するためには、定期的に歯科健診を受診することをおすすめします。

では、どの程度むし歯が大きくなったら歯を抜かなくてはいけないのでしょうか?
一つの目安になるのは、「歯茎」です。
むし歯が大きくなりすぎて、歯茎の高さよりも深くむし歯が進んでしまった場合、歯を抜かなくてはいけないという診断をすることがあります。

歯の構造は3層構造になっており、お口を開けて見える部分は「エナメル質」と言います。エナメル質は体の組織の中で最も硬く、食べ物を噛む、すり潰すなどの役割と、硬い組織で歯を守る役割があります。
エナメル質の下には「象牙質」と言う組織があり、エナメル質と比べると柔らかく、冷たい、温かいなどの刺激を神経に伝える役割があります。
最後に、象牙質の中には「歯髄」という歯の神経があります。
象牙質によって伝えられた刺激の情報を感じ取り、脳に伝えます。
むし歯の大きさは5段階で表され、上記の3層構造に至ってしまっているか否かが段階を分ける目安になります。

C0・・・初期むし歯になりつつある状態で、エナメル質が白く濁った色になっている状態。むし歯治療をする必要はないですが、白く濁った部分が欠けてしまったり、茶色に変色してきたらむし歯治療をする必要があります。

C1・・・エナメル質に限局してむし歯ができあがっている状態。
 色が黒くなってしまっていることが多いです。 この時点では特に痛みなどの症状は感じないことが多いですが、見つかり次第、治療を行った方が良いでしょう。

C2・・・むし歯が象牙質に至ってしまった状態。ここまで進行してくると、冷たい物、甘いものが凍みて痛み出すことがあります。ご自身でそのような症状を感じたら、歯科医院を受診されることをお勧めします。

C3・・・むし歯が神経にまで至ってしまい、ズキズキと痛み出します。この状態になると、神経を取る治療が必要になり、期間や費用も大きくなります。

C4・・・むし歯が大きくなり過ぎてしまい、抜歯になります。単純にむし歯で抜歯になってしまう場合は、先程お話したように一番むし歯が進んでしまった状態のC4という状態になります。一度も治療を受けずにここまで進行してしまうことは中々ありませんが、もし、そうなってしまった場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。   

③破損

歯が抜けるに至る原因の多くが歯周病とむし歯ですが、破損により歯が抜けてしまうケースも見られます。例えば交通事故にあったり、スポーツをしている際に衝突したりなど、あまりに強い衝撃を受けた場合は、歯が折れたり欠けたりしてしまうのです。

根が割れてしまった時は、即抜歯を選択しなくてはなりません。
転んだり、事故に遭ったりした時に、歯を強くぶつけてしまうと、いくら硬い歯であっても折れてしまいます。
歯のどの辺で、どのように折れるかによっても抜歯が必要か否かは変わってきますが、基本的に歯が折れてしまった時には抜歯になるケースが多いです。

また奥歯は、歯を食いしばるときに大きな圧力がかかります。無意識の食いしばりや歯ぎしりの際、1本の歯に対してかかっている力はその人の体重の5~15倍とも言われています。

成人男性60㎏の方ならかかる力は300~900㎏です。これだけの力がかかってしまうと、奥歯は割れてしまうこともあります。

むし歯や歯周病と違い、このような突発的なアクシデントは避けようがありません。しかし折れにくい・欠けにくい歯を作るための工夫ならできます。口腔ケアを欠かさずに行ったうえで、カルシウムやリンなどのミネラル類やタンパク質をバランスよく摂取して、丈夫な歯を作りましょう。

また、根管治療を行った歯は、神経の残っている歯と比べて断然、歯根破折が起こりやすいです。
よく、その状態を「木」に例えることがあります。
普通に生えている若木は強風などではしなって折れにくいですが、枯木に少し力を加えるとバキっと乾いた音を立てて折れてしまいます。
この状況と同じように、歯の神経を取ってしまった歯は、同時に血管も取ってしまっていることもあり、噛む力に負けてしまって折れてしまうことがあります。
根管治療を行った歯が割れてしまったら、大体の場合、抜歯を選択しなくてはいけません。

④根管治療後の歯

先程お話いたしました、むし歯が進んでC3と診断された場合、神経を取る処置(根管治療)が必要になります。
通常、根管治療をしただけでは抜歯には至りませんが、根管治療は複雑な歯の神経の管を探り、小さくて細い管を治療していきます。
とても難しいですし、奥歯に行けば行くほど見えにくく、治療しづらくなって難易度は高まります。

また、口腔内にはむし歯菌や歯周病菌など数千億の細菌が住んでおり、その細菌がお口の中のトラブルの原因になることが多いです。
根管治療をしている最中にも、唾液に混ざって根管内に細菌が入り込むことがあります。
そうすると、根管内で細菌が繁殖してしまい、感染根管となります。
感染根管になると根の先に膿が溜まってきて、噛むと痛い、何もしなくてもじわじわと痛むなどの症状が出てきます。
感染根管になったからといって抜歯をするのではなく、もう一度、根管治療をやり直すことが多いです。
ただ、根管治療を続けていても症状が寛解しない時、根の先の膿が大きすぎるときなどは抜歯が必要だと診断することがあります。

 

風邪などの病気ですと、少々手遅れになってからでも、以前と同じ健康体に治癒する可能性があります。ところが、自然治癒能力のおよばない歯の治療では、治療する時期によって結果が異なります。修理する箇所が小さければ小さいほど、「きれい・簡単・安い」また完成度も高くて、歯は長持ちします。むし歯の治療は、あくまでも「歯の修理」だと思っていただきたいと思います。

そうであるにもかかわらず、歯医者にはできるだけ行きたくないと思う気持ちが多くの人にあり、これが裏目に出て治療が遅れ、遅くなればなるほど、せっかく治療しても歯を失うという悪循環になってしまいます。

□歯の寿命を延ばす3つの方法

歯の寿命を延ばすためにはまず予防が大切です。

皆さんは歯科医院に行くときに、「予防のため」という理由を持って行かれることはありますか?むし歯や歯周病の治療を終えると、悪くなるまで歯科医院に行かない方が多いかと思います。

しかし、むし歯や歯周病は1、2年で再発してしまう場合が多いため、歯の寿命を長くするには定期的に歯科医院でのケアを受けることが大切になります。

この予防の大切さを教えてくれるのがスウェーデンの事例です。日本の80歳時の歯の残存数は約8.8本です。

それに比べて、スウェーデンでは80歳で21本の歯を保つことに成功しています。

そして、定期的な歯のメンテナンスに訪れる人の割合を見ても日本は5%未満なのに対し、スウェーデンでは約90%の人が受診をしているのです。

予防に重点を置いた結果、歯の寿命が延びていることがお分かりいただけると思います。

いずれも基礎的なことではありますが、極めて重要なポイントです。

①規則正しい食生活を送る

規則正しい食生活を送ることが何よりも大切です。だらだら食べ続けるとむし歯になりやすい環境が続き、歯を失うきっかけを作ってしまいます。例を挙げると夕食を取り、歯磨きをしてから寝るまでの間に間食をすると、歯が汚れたまま翌朝を迎えることになるため要注意です。

甘いものや柔らかいものばかりを食べるのもよくありません。むし歯菌・歯周病菌などの細菌は糖分を栄養にして増殖しやすく、柔らかいものばかりを食べると顎の骨が退化しやすくなるためです。先程お話したように歯にとってよい栄養素も充分に取り、規則正しい食生活を送りましょう。

②自宅でセルフケアを行う

むし歯や歯周病を防ぐためには、歯磨きなどのセルフケアを欠かさずに行うことが重要です。食べ物のかすなどが原因で歯に生じる歯垢(プラーク)には、およそ300種類・1億個もの細菌が存在します。歯垢を放置すると固まって歯石になり、自分では取れなくなるため、その前にセルフケアを行いましょう。

歯と歯の間に挟まった食べかすが取りにくい場合は、デンタルフロスや歯間ブラシなどを歯ブラシと併用して使い、汚れを落としてください。歯磨きは可能な限り毎食後に行うよう心掛け、難しい場合は水で口をすすぐなどして欠かさずにセルフケアをしましょう。

③歯科医院でメンテナンスを行う

歯石は自宅のセルフケアだけでは除去しきれません。歯周組織の健康を維持するためと頑固な汚れを取るためには専門的な治療が必要です。定期的に歯科医院でメンテナンスを受け、セルフケアでは落としきれない汚れをなくしましょう。歯科医院で定期健診を受ければ、むし歯・歯周病にかかっていたとしても、早期発見・早期治療へと移行できます。

誤解しないでいただきたいですが、「歯をとにかく残せばいい」と言う訳ではありません。

天然歯は多く残るに越したことはありませんが、それはあくまでも健康な状態ならばの話です。口内の状況によっては、歯をとにかく残せばいいわけではなく、歯を抜くのがベストな場合もあります。気になる歯がある場合は歯科医師と相談して検査を受け、適切な判断をしてもらいましょう。歯科検診は、むし歯や歯周病の早期発見・治療に欠かせません。

患者さんの口腔状態によって頻度は異なりますが、1ヶ月~6ヶ月に1回を目安に歯科医院を訪れ、定期的にクリーニングや検診を受けることでトラブルを防ぎやすくなります。加齢による歯の質の低下も歯を失う一因です。

また、歯科検診では、歯並びの変化や噛み合わせの問題なども確認できます。

特に歯ぎしりや食いしばりがある場合は、歯の破折が起こりやすいので、治療を受けることで健康な歯を維持する助けとなります。

高齢者の場合、飲み薬や持病が歯の健康に影響を与えることがあるため、歯科医師に全身の健康状態も伝えることが重要です。

歯科検診を予防のための習慣として取り入れることが、健康な歯を長く保つ秘訣です。

人間にも寿命があるように、歯にも寿命があることが今回分かっていただけたかと思います。

人間でも病気に気をつけるように歯も予防が肝心です。ぜひ定期的な歯科医院の受診をおすすめします。

■年齢別で失う歯の本数

では歯医者から遠ざかってしまう人が、どのようなお口の中の一生を過ごすのか、簡単に追ってみたいと思います。

▽20代、30代:少し歯が欠けてしまったり、詰め物が取れてしまっても、仕事などが忙しく時間も取れない。また、そこまで歯の痛みもないからとそのまま放置してしまう方もいらっしゃいます。歯医者に行かないといけないと思いながら、何かと理由をつけて歯医者には行かない日々の繰り返し。

-40歳前後を境に、歯を失うリスクが高まります-
▽40代~:この年代では、むし歯や歯周病が進行するケースが増える傾向があります。仕事や育児で忙しく、歯科検診を後回しにしがちな時期でもあるため、状態が悪化することも少なくありません。平均的に1.4本程度の歯を失う人が多いとされ、特に歯周病の予防が重要です。若い頃に歯医者から遠ざかり、悪化してしまっているお口の環境に自分でも気づいていながら、なかなか歯医者に行きづらく感じている。せっかく行ったのに「どうしてここまで放置してしまったんですか?」と怒られてしまうんじゃないかと考えてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

▽50代~:この時期は平均3.0本の歯を失う可能性があります。40代よりもさらに歯周病の予防が重要になりますので、毎日のセルフケアや歯科医院での定期検診を怠らないように注意しましょう。

▽60代~:60代からは特に歯周病が進行しやすく、歯を失うリスクが高い年代です。 この時期に失う歯の本数は平均で6本程度となります。歯を支える骨の健康状態が、この年代以降の歯の寿命に大きく影響するため、適切なケアが必要です。 60代、今までのツケが一気に押し寄せ「もう歯医者に行かないと」と重い腰を上げて、歯医者に行ってみた途端、抜歯しなくてはいけない歯がたくさんあると言われ、一気に何本も抜歯することに。
 結局大きな入れ歯を入れることになって、今まで以上に噛みづらいし、傷もできて痛くて、話しづらい。不快。

▽70代~:この時期は平均11.2本の歯を失う可能性があります。60代~の倍近い本数をこの年代で失う方も多く、多くの歯を失うことは、食事を十分に楽しめなくなることにも繋がります。

初めて作った入れ歯から、作り直しを繰り返して、その度に抜かなくてはいけない歯が出てきて、結局今は総入れ歯になってしまった。
                 

▽85歳~:85歳以降で失う平均本数は14.1本となっており、85歳では半分程度の歯を失っている方も多いです。噛む力が弱まり、栄養不足や健康面への悪影響となる場合もあります。 部分入れ歯や総入れ歯の装着が必要になるケースが増えますが、定期的な口腔ケアを行うことが健康維持の鍵となります。

■どのような経緯で歯が抜歯になるのか

ここまでは、どのような状態になったら歯を抜かなくてはいけなくなるのかをご説明してきましたが、次はどのような経緯で歯が抜歯になるまでに至ってしまうのかをご説明いたします。
歯の疾患ごとに抜歯に至る理由は異なります。最初は小さかったむし歯も銀歯を詰めて治し、銀歯が外れたり、二次むし歯になってしまって、また治療をし直し、そうこう治療を重ねているとむし歯が神経にまで辿り着いてしまい、神経を取る根管治療が必要になり、数年後に根管が感染してし、再度根管治療が必要になり、症状が落ち着かなくて抜歯になってしまうケース。もしくは歯が弱ってしまい、破折してしまって抜歯になってしまうケース。
ずらっと続けて書きましたが、これが昔から行われている歯を失う道筋に立たされた歯の治療です。
この負のサイクルをどこかのタイミングで脱しないといけません。もちろん、むし歯にならずに歯を一度も削らないことほど良いことは他にありません。

平均寿命5年と言われている銀歯をつけて、それで治療が終了した、問題な
いとは決して言えません。大げさではあると思いますが、また次のむし歯が作られる環境を自ら作り出したようなものです。なぜここまで言うかと言いますと、そもそも銀歯は日本でのみ使用されている合金で、「12%金銀パラジウム合金」と言い、「とりあえず穴が塞がり、噛めるようになる」という材料です。
金歯は大昔から用いられていましたが、金はご存知の通り高額です。
そこでコストを下げ、生体に害のない程度に色々な金属を混ぜてできあがった金属が金銀パラジウム合金です。この合金を使って歯を治療するメリットはただ一つです。それは「保険適応」これに尽きます。
国に決められた保険制度の中で使用できる材料は限られています。そんな中で、ある程度、物が噛めて、穴を埋めることができる材料が銀歯なのです。自分の歯に銀歯を入れたい歯科医師はいないと思います。
銀歯の悪いところをたくさん知っているし、たくさん見てきているからです。銀歯を入れた歯の末路は決まっているのです。
抜歯へと向かうレールに乗ってしまった歯は、その日が来るまでのカウントダウンをただひたすら待っているのです。

では、どうすればこのレールから脱出することができるのでしょうか。
それは、最新の技術、材料を選ぶことです。
家電量販店に行って、テレビを買う、洗濯機を買うと言った時に、ブラウン管のカラーテレビを安く買ったり、二槽式洗濯機を安く買ったりする人はいませんよね?
今であれば、綺麗に見られる4K、8Kのデジタルテレビ、全自動式ドラム洗濯機を皆さんお買い求めになるのではないでしょうか。
歯の材料も実はたくさんあるのです。昔から使われている、とてもいい材料や、最新の生体にとても優しいものまで開発されています。
そういった中で、昔も今も、長きにわたり使われ続け、信頼性を置ける歯科材料としてはセラミックが有用です。
セラミックはいわゆる陶器でできており、生体親和性も高くて体にも良く、噛むにも十分な硬さがあり、表面は滑沢で汚れがつきにくいです。
そして最新の接着剤を用いれば外れにくく、歯を密封する形になるので虫歯菌が詰め物の中で繁殖することもないです。
歯とセラミックを一体化させることで、歯そのものをもう一度再現するような形になるのです。
当然、ご自身の歯よりもセラミックの方が汚れはつきにくいです。
ただ、セラミックにも弱点があり、陶器を落とすと割れてしまうように、歯科用セラミックも衝撃に弱いです。
ですから歯ぎしり、食いしばりのすごい方はマウスピースをしていただく必要があると思います。
確かに、述べさせていただいた治療は高いかもしれません。保険適応外治療は高いです。
「歯医者さんは高い治療を勧めてくる。歯にお金なんてかけてられない。」
そういう声はよく聞きます。
そう感じられるのも事実なのでしょうし、話し方にもよるかと思いますが、押し付けられている感じがするのかもしれません。
ただ、その治療を行うにあたって、治療に必要な材料費、手伝ってくれるスタッフの人件費、セラミックを作ってもらう技工料金、色々なところにお金はかかってきますから、歯医者さんの手元に残るお金なんていうのは、銀歯を詰めた時と大した差はないのです。

では、なぜ歯医者さんは患者さんに良い治療、保険外治療を勧めるのでしょうか?それが良い治療に繋がることを知っているからです。

患者さんには治っていただきたいに決まっています。そして、美味しい物を美味しいと言いながら笑顔で食事をして欲しいからです。
だから、歯科医師は患者さんに何と言われようと、良いものを患者さん伝える義務があるのです。
保険外治療は高額です。地域にも差がありますが、治療の計画によっては何百万円という値段になってしまうこともあります。
しかし、それを受け入れて抜歯に向かうレールから脱出しようという方もいらっしゃるのです。きっとその方は将来、美味しいものを美味しいと家族と分かち合いながら笑顔でお食事なされると思います。
美味しいものは食べたいけど歯がない、入れ歯がガタつくからたべれるものが限られる、家族とは別の食べれるもののメニューが用意される、歯が原因で自分が食べられないものがあるから外食のお店が限られる。
こんな寂しい人生は嫌じゃないですか?そこに至るまでの幾多の決断をしてきたのはご自身ですから、全責任はご自身にあります。
むし歯になったのも、放置してしまったのも、銀歯をはめると決めたのも、歯にはお金をかけなくていいと決めたのも、すべてご自身ですからご自身の責任です。
この末路から脱出するタイミングは何度かあったはずなのです。

■どうしたら歯を守れるのか?

歯の健康を守るためには、毎日のケアが基本となります。そして歯は正しいケアを行えば、一生使い続けることが可能です。

しかし、むし歯や歯周病、加齢による影響で失うリスクが高まります。

正しい歯みがき方法を身につけ、歯ブラシだけでなくデンタルフロスや歯間ブラシを活用することで、歯と歯の間に溜まりやすい汚れや歯垢(プラーク)を効果的に取り除くことが重要です。

特に歯間は歯ブラシが届きにくい部分であり、汚れを放置するとむし歯や歯周病の原因となります。

さらに、糖分の多い食べ物や飲み物を控え、カルシウムやビタミンDを多く含む食品を積極的に摂取することで、歯の再石灰化を促し、歯の強度を保つことにつながります。

また、喫煙は歯周病を悪化させるリスクを大幅に高めるため、喫煙されている方は禁煙を心掛けることが歯を守る第一歩となります。

特に60代以降は顕著であり、日常的なケアや定期検診が大切になります。

歯を失った場合でも、入れ歯やインプラントなどの方法で補うことができますが、大切なのは、可能な限り自分の歯を守ることです。

予防を徹底することで健康な歯を長く保ち、快適な生活を続けることができます。

■まとめ

セルフケアやメンテナンスを定期的に行い、規則正しい生活を心掛けることで、歯の寿命を伸ばすことができます。

歯だけではなく、歯を支える歯茎、骨、顎の関節、それに付随する神経、筋肉。
どれをとっても複雑でありながら精巧に作られているものなのです。
この精巧に作られている組織を悪くしてしまう原因は、お口の中の細菌、宿主(性別、年齢、全身疾患など)、環境(ストレス、喫煙、服薬など)の3つで構成されます。
むし歯も歯周病も噛む力の問題も、全てがこれらの原因からなるものです。

たった一本の歯の喪失から口腔内がどんどん崩壊してくることもあります。
歯を失うと、失ったところに隣り合う歯が倒れこむように移動してきたり、その歯と噛み合っていた上、または下の歯が「挺出」と言って伸びるように歯が出てきてしまいます。
そうした歯の移動が起こると、どんどんと隣り合っていた歯の間の隙間が大きくなってきて、食べたものが詰まりやすくなったり、汚れの掃除が難しくなりむし歯になりやすい環境ができ上がってしまいます。

また挺出した歯が、噛んだ時や歯ぎしりをした時に他の歯に引っかかるようになると、顎の関節に負担が重なるようになり、口を大きく開けられなくなったり、大きく開けようとすると顎の関節に痛み、コリッという雑音が出るようになったりします。いわゆる顎関節症という状態です。
歯の揃っている方で頻繁に食事をするようになり、顔の筋肉のつき方に左右差が出てきてしまって、正面から見ると曲がったように見えるようになります。
歯を失わない、お口の環境を守るために、自分が今できることは何なのか?よく考えていただきたいと思います。
当院が考える今できることは、お口の中を清潔に保つ、歯科の定期検診に通う、歯に悪いものから良いものに取り替えるの3つであると思います。
この3か条を行うことで、皆さんの将来のお口の中は今のまま何もしないよりも、より良い状態で迎えられるということを確信しています。

自分の歯を長持ちさせることで、おいしく食事もでき、豊かな人生を送ることにつながっていきます。もっと歯というものを大切に考えていきたいですね。

編集者 医療法人フォレスト 長野フォレスト歯科 理事長 藤森 林