こんにちは!長野フォレスト歯科の藤森です。
今回は当院で行なっている歯の移植(主に保険診療適応の親知らずの移植)についてお話しさせていただきます。
親知らず
親知ず(第三大臼歯、智歯)は、一番最後に生えてくる(親知らずと言われる様に、親の手が、かからなくなった18歳以降)、一番後ろの奥歯(最後臼歯)です。
現代人の顎の大きさでは、一番最後に生えてこようとしても、正常に生えることが困難なため、以下の状態である事があります。
- 一部は見えているが、一部は歯肉に埋まっている(半埋伏智歯)、
- 全て歯肉の下の顎の骨の中に埋まっている(完全埋伏智歯)
- 横を向いて埋まっている(水平埋伏智歯)
たとえ正常に生えていても、
- うまく噛んでいない。
- 一番後ろにあるため、歯磨きが難しく、虫歯や歯周病になる可能性が高い。
当院では、うまく噛んでいない、または埋まった親知らずは、抜歯する方針です。
(私自身も上下左右4本の親知らずは、20歳代で全部抜歯してます)
移植
親知らずは、上記の様に有害であることが多いのですが、第一大臼歯、第二大臼歯が、虫歯や、歯の破折などで保存が不可能な場合に、親知らずを移植することが可能です。元々自分の歯なので、移植後の拒絶反応も有りません。
ダメになった歯を抜いて同時に親知らずを移植した歯の成功率は、論文の統計では、
約6割は一生使える
約3割は5年ほど使える
約1割は生着しないで、数ヶ月以内に脱落する
とされています。
利点
- かみ合わせの力を一番負担する大臼歯を失った時に、現在主流の入れ歯(義歯)、ブリッジ、インプラントよりも、歯触り(かみごたえ、食感)の回復が見込まれる(食感を司る歯根膜保存)
- 義歯の保険点数よりも少し高価ですが、ブリッジやインプラントに比べると、保険適応の移植であれば、安価です。
- 義歯は、義歯が安定するために窪みを隣在歯に削る。ブリッジは下手をすれば隣在歯の神経を殺してしまうほど、かなり削るのに対して、移植はインプラントと同じく隣在歯を全く傷つけない(削らない)で出来ます。
- 親知らずが根未完成なら、歯の神経を保存出来る可能性が高く、成功率も高い。(若年者は本来、大臼歯を失うことは本当に勿体ないですが、、、) など
欠点
- インプラントよりも教科書上の一般的な成功率は低い。
- 親知らずの抜歯が早く出来ないと、成功率が下がる。(一般的に肝臓などの臓器移植は全て鮮度が成功率を左右します。)
- インプラント(直径通常3.5mmから5mm、平均4.5mm)よりも、遥に大きな親知らず(直径5mmから20mm、平均12mm)を移植するので、難易度が高い。
- 移植する親知らずの根が、破折したら、出来ない場合がある。
など
当院での移植
当院では、年間20例以上の移植を行っていて、勤務医時代を合わせると300例ほど、歯の移植を行っています。数ヶ月以内にダメになった方は10名ほどで、成功率は高い方だと思います。
私の個人的な考えですが、予後を左右するのは、
一番大事なのが、移植して二週間以内は特に清潔に保てるかだと思います。
その他に、
- 植える場所の顎の骨の量がなるべく多い方が良い。
- 喫煙歴が少ない、あるいは現在は喫煙してない方がより良い。
- 歯周病病原菌の有無
- 親知らずをなるべく早く抜いて、すぐに移植出来る。
など
かと言って、将来移植のために無闇に親知らずを残すことはお勧め出来ません。
冒頭にお話した様に、移植が必要になるかもって不安だけで親知らずを残すことで、親知らずは菌の温床になりやすく、そのためにずっと毒素を体内に蓄積して、全身に様々な悪影響を残すからです。
親知らずに症状はなくても、歯科医師に確認してもらいましょう。
<当院の移植症例>
上下右親知らずを保存不可となった部位へ移植
さいごに
親知らずが気になる・抜歯しなければならない歯がある等、お悩みがある方はお気軽にご相談ください。