こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。
日ごとの寒暖差が大きくなる時期ですね。
季節の変わり目で、気温や気圧の変化などで体調を崩しやすくなりますので、体調管理に気を付けてお過ごしください。
皆さんは、歯医者で歯石取りの治療を受けたことはありますか?
今回は「歯石取りはなぜしないといけないのか?」という疑問にお答えしたいと思います。
歯石取りは『予防歯科治療』というものに分類され、お口のトラブルを未然に防ぐことを目的としています。歯石そのものには、むし歯や歯周病を進行させるような力はないといわれています。
しかし、歯石の表面はデコボコしていて、むし歯菌や歯周病菌といった細菌が付着しやすくなっています。歯石を取り除くと、むし歯や歯周病の原因菌がお口の中に滞在しにくくなります。その結果、むし歯や歯周病の進行を防ぐことが出来るのです。
目次
□歯石が発生する原理□
歯垢の石灰化により発生
歯石は、プラークである歯垢が石灰化することで形成されます。最初からいきなり歯石としてお口の中に現れるのではなく、プラークから生成されるというのがポイントです。プラークは細菌の塊で、食後4〜8時間程で作られます。早い人は、2日経つとプラークから歯石になります。プラークの段階であれば、歯ブラシを丁寧に行うことで取り除くことが出来ます。
石灰化とは本来、歯に起きる現象なので、どうしてプラークで起こるのか不思議に思われる方もいると思いますので説明していきます。
私達の唾液には、リン酸カルシウムというミネラル成分(石灰分)が豊富に含まれています。これは歯や骨の主な成分であり、それらの組織を健康に保つ上では欠かすことが出来ません。リン酸カルシウムや石灰化現象そのものは、むし歯を進行するのを防ぐ働きがあり決して悪いものではありません。問題なのは、それが汚れの一種であるプラークで起こってしまい、逆に歯石が出来る原因にもなってしまいます。
プラークが厄介なのは、歯の表面にへばりつく性質があります。口腔ケアによってしっかりと取り除かないと、唾液による石灰化を受けて、石のように硬くなってしまいます。逆にいうと、プラークが溜まっていなければ、歯石が発生することもないのです。
そして、歯石はとても硬く歯と歯の間にこびりついてしまい、歯磨きで取り除くことは出来ません。
□歯石が溜まる原因□
口腔ケアが不十分
ブラッシングでは落とせない汚れなので、一度形成されてしまうと溜まっていく一方となります。
石灰化の材料となるリン酸カルシウムは、唾液に含まれています。その量には個人差があるため、同じ様にプラークが溜まっていても、歯石が形成されやすい人とされにくい人がいるのはそのためです。唾液の分泌量が多い場合も、歯石が付着・形成されやすくなることがあります。
□歯石を放置すると起きる悪影響□
歯周病にかかりやすくなる
歯石を放置する最も大きなリスクは、歯周病の発症です。歯周病はプラークで繁殖した細菌が歯茎、そして歯を支える歯槽骨と呼ばれる骨の土台を溶かしてしまう危険な感染症です。実は日本人の歯を失う最大の原因はむし歯ではなく、この歯周病なのです。
歯石の沈着度と歯周病の進行は、密接に相関しています。歯と歯茎の境目や歯周ポケットの中に歯石が形成されると、そこが歯周病菌の住処となります。歯周病菌が繁殖し、歯茎に感染すると歯周病を発症します。歯周病では歯茎の腫れやブラッシング後の出血などの症状が見られるようになります。初期の段階では、歯茎が腫れ、出血したり、痛みが出たりします。重度の歯周病になると歯を支えている骨が溶かされ、歯がグラグラして最終的に歯を失ってしまう可能性もあります。既に歯周病を発症している場合は、病状がさらに進行していくため要注意です。
歯周病は全身の健康にも悪影響を及ぼします
歯周病になると、歯茎から出血するようになります。その細菌が腫れた歯茎の血管を逆流し、全身疾患の糖尿病や心臓病、肺炎、ガンや脳梗塞、早産などのリスクを高め全身に悪影響を及ぼします。
現在では様々な病気や疾患と歯周病の関係が分かってきています。
むし歯にかかりやすくなる
歯石は、むし歯菌の温床にもなります。歯石を放置すると、さらにその上にプラークが付着し、むし歯菌がどんどん増えていきます。その結果、菌に感染し、エナメル質や象牙質を溶かしていくのです。
口臭が強くなる
私たちのお口の中は、必ず何かしらの臭いがします。どんなに口腔ケアを徹底しても、生理的口臭と呼ばれる臭いはゼロに出来ないからです。ただ、歯垢や歯石が溜まっていると、生理的口臭とはまた違った臭いが発生します。歯石がザラザラしているので、歯垢が溜まりやすく細菌が繁殖しやすい状態になります。お口の細菌が発酵(食べかすなどを分解)する過程でガスを発生させて嫌な臭いがします。つまり、歯石を放置すると、口臭まで悩まされることとなるのです。
着色汚れが付着しやすくなる
歯石が付着して、表面がデコボコしていると、色素も付着しやすくなります。
タバコはもちろん、コーヒーや紅茶、赤ワインと言った色素の濃いものは特に着色しやすいといわれています。
□歯石取りを歯科医院で行なった方が良い理由□
歯石は歯ブラシで取り除けない
歯石は歯ブラシで取り除くことが出来ないので、歯石の内側にある歯の表面も磨くことが出来ません。市販の歯ブラシでゴシゴシと強く磨いても、石のように硬い歯石には全く効果がないのです。そこで有用なのが歯科医院で受けるスケーリング(歯石除去)です。
□付着してしまった歯石は自分でも取れるか?□
「歯石を自分でも取れたらいいのに…」と考える方もいらっしゃると思います。
適当な道具で無理に取ろうとすると、歯や歯茎を傷付けてしまったり、ざらつきが残って余計に歯石が付着しやすくなったりすることがあります。
□歯石取りの流れ□
「歯石を取って欲しい」と歯医者に行っても、すぐに取ってもらえるとは限りません。歯石取りを行う場合、まず歯や歯茎の状態を検査してから行うことがほとんどです。
①歯や歯茎の状態を検査
歯石を取り始める前に、まず歯や歯茎がどのような状態なのか検査していきます。
歯周病検査とも呼ばれ、歯周ポケットの深さや出血するかどうか、歯が揺れ動いていないかなどを調べます。歯石は、目に見える範囲だけでなく、歯茎の中にも付着するのをご存知でしょうか?歯周病検査で使用するプローブという器具を使って、歯茎の中の歯石を調べることが出来ます。きちんと歯石を取りきるためには、歯石取りも前の歯周病検査が重要になります。
②専用の器具を使って歯石を取る
検査が終わったら、スケーラーと呼ばれる専用の器具を使って歯石を取ります。
・超音波スケーラー
超音波の振動を利用して、歯の表面から歯石を剥がしていくのが「超音波スケーラー」です。超音波スケーラーは、超音波振動による熱が発生するため、冷却するための水を出しながら使用します。歯石が多く付いていても短時間で取り除くことが出来るのがメリットです。
・ハンドスケーラー
いくつかの種類にハンドスケーラーを使い分け、細かい部分の歯石を取り除いていきます。先端が刃物のように鋭く研がれたハンドスケーラーなら、石灰化した歯垢も効率良く削り落とせます。必要の応じて力加減を調整出来るのがメリットです。振動で歯石を取る器具に比べると時間が掛かります。
歯科医院では状況に応じて、スケーラーを使い分けて歯石取りを行います。歯石は歯肉の表面に付いている場合なら通常のクリーニングで取ることが出来ますが、次第に歯と歯茎の間にも付着していきます。歯肉の中深くにこびりついた歯石は、SRP(スケーリングルートプレーニング)という徹底した歯石除去をします。
③歯の表面を磨く
歯石を取り除いた後は、歯の表面をツルツルに研磨する工程があります。歯石取りの後、そのままにしておくと細かいザラザラが残りやすいのです。ゴム製のチップやブラシを使いザラつきを研磨します。歯の表面を研磨することで、プラークをつきにくくすることが目的です。また、細かい着色汚れ(ステイン)も研磨で落とすことが出来ます。
□歯石取りは痛いのか?□
「歯石取りは痛い!」とどこかで聞いたことはありませんか?痛みはなるべく感じたくないという理由で歯石取りを避けている方もいるのではないでしょうか?誰でも痛みを感じるのは嫌ですし、怖いですですよね。
歯石取りは、歯の表面に付着している汚れを取り除く治療です。歯を削ったり、歯茎を傷付けたりすることはないため、処置自体に痛みを伴う治療ではありません。しかし、歯茎が腫れた状態で治療を受けたり、もともと知覚過敏があったりなどお口の状態によっては処置中や処置後に痛みを感じることもあります。例えば、超音波スケーラーで歯石を取る場合は、お水を出しながら使用するので知覚過敏のある方はしみることがあります。その場合には、ハンドスケーラーで歯石を取ります。
歯石除去後の歯は、歯石に覆われていた所が剥き出しになった状態で、冷たいものをはじめ刺激に敏感になっています。そのため、痛みが治るまでは辛いものや冷たいもの、炭酸などの刺激物は避けるようにしましょう。また、歯茎の腫れや出血が気になる場合には、毛が柔らかい歯ブラシで優しくブラッシングするようにしてください。知覚過敏用の歯磨き粉には、歯の表面への刺激を神経に伝わりにくくする成分が含まれているので、冷たいものがしみるときにお勧めです。
□適切な歯石取りの頻度□
歯石取りの目安は3ヶ月に1回です。
歯石取りが一般的に勧められている頻度は、3ヶ月に1回位が適切です。歯石の付きやすさは個人差があり、お口の状態によって歯石の形成速度も大きく変わり、また歯周病の進行の度合いによって人それぞれです。歯石の形成が極端に早い人は、1〜2ヶ月に1回程度の頻度で歯石を取っても良いかと思います。ご自身では歯石が付いたと感じなくても、普段のブラッシングで行き届かない所に歯石は付着します。
歯科医院の定期検診では、歯石を取るだけでなく、歯のクリーニングやブラッシング指導、フッ素塗布なども受けることができます。過去に歯周病の治療を受けていたり、病状が安定している状態であったりする場合は、症状の進行を抑えるためにも定期検診・メンテナンスが重要となります。
□歯科医院でブラッシング指導を受けられる□
歯石取りを歯科医院で行なった場合、ブラッシング指導やデンタルフロスや歯間ブラシなど、清掃補助器具の使い方も併せて受けることが出来ます。
歯磨きというのは、ついつい自己流になりがちなので、定期的に歯科衛生士によるトレーニングを受けることが推奨されます。歯ブラシの正しい選び方や使い方、歯垢・歯石を溜めない方法などを専門家から学びましょう。歯のクリーニングでは、歯の表面を丁寧に磨き上げますので、歯が健康になるだけでなく、歯の着色がきれいに落ち、歯の本来の白さを取り戻せること、そして口臭をより改善出来ます。
歯石による悪影響は、歯周病やむし歯リスクを高めるだけでなく、口臭の原因になるなど様々あります。歯石をそのままにしていることで、歯周病を進行させやすくするだけでなく、歯周病は全身への健康にも影響を及ぼします。歯石が及ぼす悪影響を防ぐためにも歯石取りは大切です。
しかし、どんなに意識して歯磨きが出来ていても、100%歯石の形成を防ぐことは難しいです。そして、しかし、溜まってしまった歯石は、自分では取ることは出来ません。お口の状態が悪くなる前に、3ヶ月に1回を目安に歯科医院で歯石を除去しましょう。また、歯垢のうちであれば除去もしやすいので、毎日の歯磨きを丁寧に行うことも大切です。セルフケアで取りきれない細かい汚れや歯石は、クリーニングや歯石取りにお任せしましょう。ご自身でのセルフケアと歯科医院によるプロフェッショナルケアの両立が出来れば、歯石だけでなく様々なお口の病気の予防に繋がります。重症化する前に歯科医院での歯石取りがお勧めです!
編集者 医療法人フォレスト 長野フォレスト歯科 理事長 藤森 林