こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。
9月も残暑が長引くそうですね。また大気の状態が不安定になりやすいシーズンに入り、雷を伴った激しい雨が降るなど天気の急変にも気を付けましょう!
インプラント治療では、人工歯根を埋め込む手術の際、「サージカルガイド」と呼ばれる装置を使用することがあります。一般の歯科治療では使うことのない装置であり、初めて耳にしたという方も多いかと思います。サージカルガイドは、コンピューターシミュレーションによりインプラントの正確な埋入を可能にします。術後の痛みを最小限に抑える画期的なインプラント治療法です。
インプラント手術にはなぜこのようなサージカルガイドが必要なのでしょうか。
今回はそんなサージカルガイドはどんなものなのか、使用する理由やメリットなどを詳しく解説していきたいと思います。
目次
サージカルガイドとは
サージカルガイドとは、インプラントオペの際に用いるマウスピースのような形の装置で、人工歯根を安全かつ正確に埋め込むために役立ちます。サージカルガイドには人工歯根を埋め込む適切な位置・角度・深さが記録されており、手術当日はそのサージカルガイドに従って、専用のドリルを用いて埋入します。
事前の精密検査や診断、それらをもとに立案した治療計画を参考にして作製するため、手軽に作れるというものではありませんが、インプラント治療の質を向上させる上で非常に有用です。
歯科医師の経験や技術があっても、それを補完してくれるものがサージカルガイドです。
サージカルガイドの素材は、レジン製でマウスピースのような形をしています。このため「サージカルプレート」と呼ばれることもあります。
インプラントオペ中は、歯に被せて使います。ドリルを固定するための穴を参考に位置を決めドリルで穴を開けます。
サージカルガイドを使用するメリット
1、下歯槽神経を傷つける恐れがない
下の顎のインプラントを埋め込む際には、下顎管(かがくかん)と呼ばれる重要な神経と血管が収められた空洞を損傷しないよう注意しなければなりません。下歯槽神経(かしそうしんけい)を傷つけると、術後に唇周囲の麻痺が残ってしまうからです。下歯槽動脈を傷つけた場合は、術中の大量出血を招くことがあります。サージカルガイドを用いれば、下顎管に当たらないような埋入処置が可能となるため、そうしたトラブルを未然に防ぐことが可能です。
2、上顎洞への突き出しを避けられる
上の顎のインプラントを埋め込む際には、人工歯根が上顎洞(じょうがくどう)という空間に突き出ないよう注意する必要があります。人工歯根が上顎洞へと突き出ると、上顎洞炎などの深刻な病気に発展する場合もあります。そもそもインプラント手術が失敗してしまうため、サージカルガイドで上顎洞への突き出しを防止することは非常に大きなメリットとなります。
3、美しく長持ちする歯にできる
人工歯根を埋め込む位置や角度、深さというのは、安全性だけではなく、機能性や審美性まで大きく左右します。サージカルガイドを用いて適切な位置に人工歯根を埋入できれば、美しく長持ちする歯に仕上げることも可能となります。
サージカルガイドを用いたインプラント治療の流れ
1、CTスキャンによる三次元的な診査
精度の高いサージカルガイド作製にはCTが不可欠です。サージカルガイドを作製する際、歯科用CTを活用すると精度が著しく向上します。なぜなら、レントゲン撮影のみの検査では2次元的な情報しか得られないのに対し、CT撮影では3次元的な情報が得られるからです。そもそもサージカルガイドは、人工歯根を埋め込む位置を3次元的にガイドしてくれる装置なので、ある意味その作製には歯科用CTによる撮影が欠かせないといえます。
同時に、インプラント治療を行う上でも歯科用CTによる精密検査は必須となっているのが現状です。傷つけてはいけない神経や血管などが存在する顎の骨に、チタン製のネジをドリルで埋め込むのがインプラント治療ですので、可能な限り精密な検査を実施することが望ましいです。さらにサージカルガイドを用いることで、手術中の大きなトラブルを回避でき、仕上がりも美しい人工歯を手に入れることができるのです。
また、当院ではインプラント予定の患者様には必ず歯科用CTを撮らせていただき、診査・診断を行います。CT撮影により、二次元的なレントゲンからでは分からなかった骨の密度、神経、血管の位置が立体的により正確に確認できます。
まずは、歯科用CTで撮影した歯型の立体画像を元に、コンピューター上でインプラント手術のシミュレーションを行い、インプラント体の大きさや、埋め込む位置、深さや角度を決定します。
2、シミュレーションソフトによる確認
CT画像をもとに、コンピュータ上でインプラント手術のシミュレーションを行います。ここでインプラント埋入の位置、インプラント体のサイズなどが決定されます。
3、サージカルガイドの作成
当院では、光学印象データを基にサージカルガイドの作製をオーダーします。シミュレーション通りのサージカルガイドが届くと、いよいよ手術の準備が整います。
4、サージカルガイドの試適
インプラント治療の1週間以内に来院していただき、実際にサージカルガイドを装着してもらいズレや変形などがないか確認します。
5、サージカルガイドを装着した状態で手術
サージカルガイドを口腔内に装着した状態でインプラントの手術がスタートします。歯科医師は状況を見ながら、ガイドに沿って、手術を進めます。
正確な埋入を可能にするサージカルガイド
サージカルガイドと呼ばれるインプラントポジションをサポートする装置を使用してインプラント手術を行うことで、神経などを傷つけることなく、適切な位置にインプラントを埋入することが可能になります。
よりリスクを抑え、安心してインプラント治療を受けていただくために、当院でもサージカルガイドを導入しています。
ドリルを固定する穴があいているため、歯肉を大きく切り開く必要がなく、インプラントを埋入する位置や深さ、角度のズレをほぼなくすことができます。
安全性への配慮に加え、インプラント治療の精度向上のため、当院ではサージカルガイドを導入しております。
サージカルガイドを用いたインプラント治療の4つの特徴
1、事前シミュレーションで損傷を防げる
インプラント治療を行う際には、それぞれの患者様の骨の厚み、緻密さ、噛み合わせの力、位置等を考慮したうえでインプラントの長さ、太さ、位置を決めていきます。
事前にCT画像から神経や血管の位置、骨の状態などを把握し、コンピュータ上のシミュレーションを繰り返して適切な埋入計画を立案します。このシミュレーションデータを基に、サージカルガイドは作成されます。
インプラントは神経や血管等の構造を直接傷つけないように、これらから2mm以上離して埋入するとされています。サージカルガイドを使用した場合の誤差は0.99mm~1.24mm程度であるため、事前に十分なシミュレーションを行うことで、損傷を防ぐことができます。
2、手術が早く終わる
サージカルガイドを使用すると手術の時間が大幅に短縮されます。
通常のインプラントオペに比べ、歯肉の切開、剥離、骨を削る量が最小限に抑えられるからです。通常のインプラント手術では1~2時間に及ぶ手術が、サージカルガイドを使用すれば短時間で終わることもあります。
手術では、作成したサージカルガイドに沿って骨に穴を開けていきますので、無駄に歯ぐきを切開することがありません。最小限の穴を開け、そこにインプラントを的確に埋入することが可能になるのです。
事前にシミュレーションを行うので、手術時間の短縮が期待できます。
3、大事な組織を守るために
口の中には重要な神経、血管、構造がたくさん存在します。 二次元的なレントゲン情報のみで安易な診断を行うと、これらの重要な組織も傷つけてしまう危険があります。
CTは三次元で撮影を行うため、レントゲン写真ではわからない、顎骨の中にある神経や血管まで立体的に把握できます。 当院ではよりリスクを抑えて手術を行うため、CTから得られたデータや光学印象を基に、サージカルガイドをオーダーします。
ドリルを入れる場所をあらかじめ決めているので、傷口を最小限にとどめ、神経や血管をあやまって傷つけてしまうリスクも避けることが可能です。
手術の安全性を高めるだけではなく、術後の痛みや腫れが軽減されます。
4、インプラントを長持ちさせる
サージカルガイドを使って、インプラントを正しい位置に確実に埋入することで、土台がしっかりと安定します。
インプラントを長く使っていただくためには、安定した土台と適切なメンテナンスが必要です。
インプラントが間違った方向に入ってしまうと、人工歯を装着する際に歪みが生じ、汚れがたまりやすくなったり、周りの歯に負担をかけたりするため、インプラント歯肉炎を起こす可能性が高まります。サージカルガイドの使用は、インプラントを長持ちさせることにつながるのです。
インプラント治療の安全性を高めるには、歯科医師の専門的な知識や経験はもちろんですが、新しい技術を導入し活用することも重要です。
サージカルガイドが必要な理由
1、骨の幅が分かる
サージカルガイドがあることで、骨の幅がどの程度あるか分かります。
インプラントは骨の真ん中に埋入すると力が分散され骨の負担が少なく済みます。
インプラントは骨に合わせた太さを選ぶ必要がありますので、骨の幅が分かることにより、負担のない太さを選択する助けにもなります。
2、埋入位置と角度が分かる
インプラントを埋入するための穴が歯肉側に偏ったり、隣の歯の根に接近してしまったりすると、脱落や炎症の原因になります。
サージカルガイドにあいた穴に正確に埋入することで正しい位置と角度で手術を行えます。
3、上顎洞や下顎管と接近しないために
人の口腔の周辺には、上顎洞という大きな空洞や、下顎管という、大きな血管や神経が通った管があります。
インプラントがこれらに触れてしまうと、炎症や出血などを起こす可能性があります。
サージカルガイドを用いればこのようなリスクを回避しやすくなります。
まとめ
サージカルガイドはインプラント手術中に使う、埋入ポジションを決めるための装置です。この装置は事前のシミュレーションから作られます。
手術中に埋入位置や角度、骨の幅などを知ることができるため、インプラントを正しい位置に埋入することが可能になります。
インプラントが正しい位置に埋入されると骨やインプラントの負担が減り、結果的にイプラントの寿命を伸ばすことにつながります。
そしてサージカルガイドはメリットが多い補助用具です。
さまざまな利点があるため、より確実な手術を行いたい方は、サージカルガイドの作製をおすすめします。
必ずしも使用しなくてはならないという決まりはありませんが、メリットも多いことから歯科医師とよく相談して使用するかどうかを決めるようにしてください。
当院では患者様の安全を第一に考えた治療をお約束します。
インプラント治療をお考えの方やご興味のある方は、ぜひご相談ください。