こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。
早くも5月ですが、新しい環境には慣れましたか?
連休明けで疲れが溜まる頃ですので、くれぐれも体調に気を付けてお過ごしください。
歯科治療が苦手という方は、多くいらっしゃいます。特に、むし歯治療中の削る音や、振動など、お口の中で歯医者さんに長時間黙々と治療をされるのは、あまり心地の良い状態ではありませんよね。せっかく、頑張ってむし歯治療を行ったのに、「あれ?治療したはずの歯が痛い。」、「麻酔が切れたら、しみる感じがする…」など、治療後に不安を感じる症状が出てしまったら、心配になってしまいますよね。むし歯治療後に、痛みやしみるといった症状が出るのは、進行したむし歯の治療をした方に多くあることです。
今回は、歯の治療後の痛みの原因と再受診すべき痛みなのか、痛みが出た時の対処法などについてご説明いたします。
まず、歯の治療後の痛みは、どんな場合に起こるのでしょうか。実は色々なケースが考えられます。むし歯が大きく歯の神経の近いところまで進行しているケースで治療を行った後、痛みが出ることがあります。むし歯自体は、歯の神経まで到達していないので、間接歯髄保護処置を行ったケースです。多くの場合は、歯髄を保護し直接的な刺激や細菌感染を防ぐことができます。ただ、歯からむし歯の部分を取り除く際に摩擦熱が発生し歯の神経を刺激し、炎症を起こしてしますことがあります。小さいむし歯の場合は、ほとんど起こりませんが、むし歯が神経の近くまで到達し、間接歯髄処置が必要となる時に起こることがあります。そのため、歯の治療後に痛みを感じやすくなります。冷たいものにしみる程度の軽い痛みの場合は、一時的に起こっても時間が経つと治っていくことが多いです。何もしないでも痛みが続いたり、かむと痛い、あるいは日に日に症状が悪化している場合は、歯髄炎が起こっている可能性が高く神経を取る処置(根管治療)が必要になる場合があります。
目次
=麻酔注射による傷から細菌感染した場合=
歯科治療では、治療時の痛みを抑えるために麻酔を使用することが頻繁にありますが、この歯科麻酔によって治療後に痛みが引き起こされる場合があります。
麻酔後に痛みが生じる要因としては主に2つ挙げられ、一つは歯科麻酔時の注入圧力による内出血によるもの、もう一つは麻酔注射をした部分の傷口からの細菌感染によるものです。
歯科麻酔注射による内出血については時間が経つにつれて血液が体内に吸収されていくため、しばらく様子を見るという対応が基本なります。
傷口からの細菌感染の場合においても基本的には自然治癒しますが、症状がなかなか収まらない場合は抗生物質などの薬を処方してもらうことも有効です。
特に歯周病の方の場合は傷口からの感染をしやすい状態になっていますので、治療前に歯周病治療を行ってお口の中の細菌をなるべく減らした状態で治療を行うことが治療後の細菌感染を予防するポイントとなります。
=神経近くまで達したむし歯で、神経を保存する治療を行った場合=
歯科医師は、できる限り歯を最小限削り、神経はなるべく残すようにしています。ダメージを受けている神経ならば取り除けばいいと思われがちですが、神経はなるべく抜かないに越したことはありません。神経を抜いた歯と神経を抜かない歯を比較した場合、神経を抜いた(抜髄)歯は歯質が弱くなり、破折や抜歯などのトラブルを起こしがちで歯の寿命が短くなります。そのため、象牙質までむし歯が進行した場合、神経の近くまでむし歯を取り除き、レジンなどを詰める処置をした際には、歯を削る振動や、レジンを接着するための薬品などが、歯髄に刺激を発生し、じわじわとした痛みを治療後に感じることがあります。
通常は2~3日で炎症が落ち着き、痛みも落ち着きます。
従来まで、神経近くに達したむし歯は抜髄治療が主体でしたが、最近ではなるべく神経を取らずに残す治療が推奨されているため、このような痛みを感じられる患者さんも増えているように感じます。
この痛みは決して歯科医師の技術不足によるものではなく、しっかりと治療を行ったことによる痛みといえますので、患者さんには是非ご理解いただければと思っております。
=根管治療後の痛み=
むし歯が神経まで到達し、神経処置をされた方もいらっしゃると思いますが、神経処置を行ったのでこれで痛みがなくなって安心だな。と思っていたら、食事ができないほど痛みだした。という経験はありませんか。これは、よくあるケースです。
根管治療を行ったにもかかわらず痛みが消えない場合、その原因として考えられるものの一つに「根管内の汚れや細菌が残っている」可能性があります。神経を取る処置は、歯の神経が生きている状態で行う抜髄という処置と、歯の神経が感染により死んでしまった後に行う感染根管治療という処置に分かれています。特に、治療後に痛みやしみる症状が強く感じられるのは、抜髄を行った際です。抜髄の際には、麻酔を行い、神経を取っていくのですが、歯の根っこは人によって形が異なり、根っこの先端まできれいに神経を取り除かなければいけません。歯の根はとても複雑な形態をしており、歯の神経や細菌を一回の治療で全てきれいに取り除くことができないことは十分にあり得ます。その場合は、根管治療を行ってから痛みが消えずにズキズキとした痛みや歯茎の腫れが残ることになります。
また、歯の神経がほとんどない場合でも痛みがでることがあります。それは、根管治療に使用する器具で歯と骨の間にある歯根膜に刺激を与えてしまったため歯根膜炎を起こすことがあります。歯根膜炎が起こると痛みを生じてきます。主な症状として、「歯が痛む、歯が浮いた感じがする」というものです。このような症状が出ると痛みで物がかめなくなってしまします。
しかし、根管治療は複数回にわたって、神経を取り除く処置を行うので、一度の治療で取り切れず、痛みがじんわり残るといったことは、あることです。治療後の痛みが気になる際には、処置後に痛み止めを処方してもらうこともできます。また、感染根管治療の際にも、歯の神経は死んでいますが、感染した神経を取り除く処置を行う際に、根っこの先端から感染した組織がわずかばかり流出したり、消毒の薬剤が刺激になったりと、痛みや違和感を治療直後に感じることがあります。神経を取り除く処置を行っている場合には、数回にわたって治療を行う必要があり、根管の中には、感染した組織を取り除き、症状を鎮静するお薬が入っています。基本的には、徐々にこのお薬が根管内に作用し、痛みや不快感を取り除いていきます。
根管治療後の痛みは、治癒過程の一部として感じられることがあります。歯の内部の感染を除去する治療であるため、歯の周りの組織が回復するまでに時間がかかることがあり、その間に軽い痛みや違和感を感じることがあります。
根管治療後、一週間ほど経過しても痛みが消えない場合は神経や細菌が残っていることが考えられますので、その旨を歯科医師に伝えて治療をしてもらいましょう。
=根管治療で歯に薬を詰めた後に痛い=
根管治療の最後の仕上げとして、消毒した歯の根の中に細菌が入り込まないよう、最終的な薬を詰めて密閉するという処置を行いますが、この治療の後に歯に痛みを感じる場合があります。
これは、薬を詰める際に隙間ができないように圧力をかけながら薬を詰めていくため、また根の先までしっかりと殺菌消毒処置を行うため、根の先端の神経を刺激することで起こるものです。
この痛みも一過性のものですので心配ありません。むしろ、しっかりと根の先まで処置を行ったことによる痛みですのでご安心いただければと思います。
=銀歯やセラミックなどの詰め物を入れた後の痛み=
歯の根の治療(根管治療)を終えた後は、ほとんどの方は銀歯かセラミック、ジルコニアといった 詰め物や被せ物を装着すると思います。その後、痛みが出ることもあります。
保険の歯科治療では、詰め物や被せ物の素材に銀歯などの金属が一般的に使われますが、ご存知のように金属は熱の伝導率が高いため、冷たいものや熱いものの刺激を歯の中に伝えやすく、冷たいものや温かいものを、治療後数日において、食べたり飲んだりする際には、神経に刺激が伝わりやすくなります。その刺激が「しみる」といった痛みとなって感じられることがあります。
「せっかく詰め物や被せ物をしたのに、治療前より余計にしみる!、痛くなった!」と驚いてしまいますが、この症状は徐々に治っていきます。これは、歯の象牙質に第二象牙質といって刺激から神経を守る組織が形成され、徐々に痛みや刺激を感じにくくなるためです。
ほとんどの場合、 一週間ぐらいで治ってきます。 しかし、 まれに長期間続くことがあります 。一週間ぐらいで治るケースは問題ないことが多いですが、一ヶ月以上痛みが続く場合は 歯髄炎になっている可能性があります。長期間症状が改善されない場合は歯科医院を受診しましょう。 放っておくと歯髄が炎症し歯根膜炎を併発する可能性がありますので気をつけてください。
=詰め物や被せ物の高さがあっていない場合=
詰め物、被せ物による治療を行った後に「噛むと痛い」という症状が生じた場合は、歯根膜が炎症を起こしている「歯根膜炎」になっている可能性があります。
歯根膜とは、歯と顎の骨(歯槽骨)の間にある膜のようなもので、噛んだ時にかかる力を吸収・緩和するクッションのような役割を果たしている歯周組織で、歯根膜炎はこの歯根膜に炎症が起きた状態です。
歯根膜に炎症が起きる原因はさまざまですが、その原因の一つに噛み合わせの高い被せ物や詰め物によって特定の歯に集中して強い力が加わることにより、歯周組織が破壊される「咬合性外傷」が挙げられます。
咬合性外傷の場合、噛むと痛いという症状のほか、歯が浮いたような感じがする、顎の下のリンパ節が腫れて痛む、頭痛や発熱があるといった症状が出る場合もあります。
この場合は自然に治癒することはありませんし、他の歯や全体的な噛み合わせにまで悪影響を及ぼすこともあります。
このようや違和感や症状が現れた場合は、歯科医師にその旨を伝えて高さのあっていない詰め物や被せ物を調整してもらうようにしましょう。
しかし 歯の痛みが軽度な場合は 、治療後 2〜3日間は様子を見ても大丈夫なケースが多いです。というのも多くの場合 、2〜3日ぐらいで自然に痛みがなくなっていくことが多いからです 。ただ、「強い痛み」、「噛むと痛い」、「歯茎が腫れた」といった 症状が出た場合は、早めに受診されるのが良いと思います。
=歯石除去後の痛み=
定期検診で歯のクリーニングのため歯石除去(歯の表面や歯茎の下に堆積した歯石を専用の器具で取り除く処置)をされることがあるかと思います。 その後「しみる、痛い」と言った症状が出ることがあります。歯石は、歯磨きでは除去できないため超音波スケーラーの振動で砕いて取ったり、手用スケーラーを使用して取ります。
そのため超音波スケーラーの振動や手用スケーラーを使用した際の刺激によって一時的に痛みが生じることがあります。
また歯石の付着量が多いと、歯と歯茎の間の部分を覆うように歯石が付着することがあります。歯が歯石で覆われていると外部からの刺激が歯に伝わりにくくなります。このような状態で、歯石取りを行うと、それまで伝わりにくくなっていた刺激が直接歯に伝わるようになり、しみるような症状が生じやすくなります。
また、歯石が蓄積している方は、長い間歯茎の炎症が繰り返し起こっている可能性が高いです。炎症を繰り返している方は、治療完了後に、歯茎が下がりやすくなります。歯茎が下がると歯の根っこの部分が出てきます。歯の根の部分は、外部の刺激が伝わりやすく、冷たい物を食べたり飲んだりすると、しみる症状が出やすくなります。歯茎を下がりにくくするためには、早めの治療と正しいケアを継続して行い、歯茎の炎症を繰り返さないことが重要になります。
歯石の付着量の多さは歯茎の炎症を強めてしまう原因にもなります。歯茎の炎症が強いと治療後しばらくは痛みが生じやすいです。治療により炎症の原因である歯石を取り、その後もブラッシングなどで正しくケアを行うと歯茎の炎症が落ち着いてきます。そうすると痛みも感じにくくなります。このようなケースは知覚過敏症を起こしている可能性が高いので 知覚過敏症用の歯磨き剤を使用することをおすすめします。ほとんどの場合痛みは消失していきます。二週間経って治らない場合は、歯科医院を受診してください。知覚過敏症の薬液を塗布することによって治ることが多いです。
=治療後の痛みやしみる症状への対処方法=
進行したむし歯の場合、治療直後にしみる、痛いといった不快な症状が起こるのは、ゼロではありません。特に神経の近くを削ったり、神経を取り除く処置を行った際には、よくあることです。
では、そういった症状をどのように緩和していけばよいでしょうか。
まずは、痛み止めを飲むことも一つです。症状が不快で我慢できない場合には、歯科医院で処方された痛み止めや、薬局やドラッグストアで販売している頭痛などにも使われている痛み止めを飲んでみましょう。痛み止めは、飲んでから効果が発揮されるまで時間がかかる方もいらっしゃるので、痛みを感じ始めたら早い段階で飲むことが重要です。しかし、胃への負担も大きな薬ですので、容量や用法をしっかり守って服用しましょう。
また、痛みやしみるといった症状がある歯のあたりを、冷却シートや、濡らしたタオルで冷やしてあげることも効果的です。強い刺激は、痛みを強くするきっかけにもなりかねないため、氷などで冷やすよりは、冷たいタオルの方が安心です。
治療後に、痛みや刺激を感じると、「どうしてだろう?治療がうまくなかったのかな?」とご不安を感じで、歯を触ってしまいたくなるのもですが、治療を行ったばかりの歯や、治療中の歯を舌や指で触って確認するのは、感染を引き起こす可能性もあるため控えた方がよいでしょう。
歯磨きを丁寧に行い、口腔内を清潔に保つことが、治癒を早める手助けとなります。
痛みが長引く場合は、自己判断で放置せず、必ず歯科医師の指示を仰ぎましょう。
また、歯の神経の痛みは、熱いお風呂につかる、お酒を飲んで気にならないようにするといったことでは、対処できません。血行が良くなればなるほど、歯髄への血流量が増加するため、痛みや刺激が強くなります。安静に過ごすことが大切です。
=当院での治療法=
・虫歯治療後に痛みが生じた場合は、まずどの程度の痛みなのか、どのような時に痛みを生じているのかを確認します。 例えば、 むし歯治療で歯髄保護剤が入っている場合は、 歯髄炎の可能性が高いと言えます。一度様子を見ることがありますが、 痛みが強い場合は抜髄( 根管治療)を行います。
・根管治療後に痛みが生じた場合は、再度、根管長を測り、神経が残っているかどうかを確認ししっかりと根管洗浄 消毒を行います。
・ 銀歯やプラスチック レジンなどの詰め物を装着した後に痛みが出た場合 、咬合調整を行います 。装着時も確認することなのですが、 噛み合わせが ぴったりと合っているかどうかを確認します。
ただ、どの処置後の痛みの場合も強い痛みあるいは炎症性の痛みと判断した場合は、抗生剤と鎮痛剤を投与することが多いです。 抗生剤は、軽い痛みの場合は、少し様子を見ることがあります。 先にも述べたように、少し冷たいものがしみるとか、少し熱いものがしみるといった軽度な痛みの場合は、時間が経てば 自然に治ることがあります。痛みが出た場合は、何でも根管治療を行うというわけではありません 。しっかりとした診断が求められるケースだと思います。
=治療後に再受診すべき痛みの目安=
基本的に、むし歯治療後の痛みやしみるといった症状は数日で感じなくなっていきます。しかし、注意が必要で再受診すべき痛みとはどのような場合でしょうか。
まずは、痛みが時間の経過とともに増していく場合です。また、治療した歯の周囲が腫れてきた、赤くなってきたという症状も受診すべき目安の一つです。痛みの強さや不快感の程度には変化がなくても、数日たっても症状が引かない場合にも、一度確認のため再受診をして確認してもらうことをおすすめします。特に、腫れや痛みの増加は、何らかの感染が疑われるため、歯科医院での処置が必要です。
=まとめ=
むし歯の治療を行って痛みが出るということは 、患者さんにとってとても負担を感じることだと思います 。
むし歯治療は、麻酔の治療を行う、削る、神経をとるといった工程があり、処置中の音や振動は不快なものです。せっかく、時間をかけて治療を行っても、治療後に痛みやしみるといった症状が発生すると、心配になってしまいますよね。神経に近いむし歯の処置や、神経を取り除く処置を行った際には、治療直後に痛みや不快感が出ることは、治療後に歯科医師やスタッフから説明があるかと思います。ご自宅で、痛みや不快感をやわらげるために、適切に痛み止めを使用し、タオル等で冷やすといった応急処置をまずは試してみることをおすすめします。せっかく治療を行った歯に痛みや不快感があると心配になってしまうものですが、感染を引き起こすことになるので、くれぐれも指や舌で治療直後の歯を刺激しないようにしましょう。また、治療中や、治療終了直後には、刺激となるような熱いものや冷たいものを食べたり飲んだりしないようにすることも大切です。
痛みやしみるといった不快感は、数日でだんだんと消失していくことが予想されます。これは、神経の近くに第二象牙質という組織が作られ、刺激から神経が守られるようになることや、神経をとる治療中であれば、根管内にいれたお薬により、感染した組織が消毒され症状が鎮静化するためです。
しかし、痛みがどんどん強くなる、治療した歯の周りが腫れてきたといった症状が出た場合には、歯科医院を受診し、一度確認してもらいましょう。何らかの感染を起こしてしまった場合には、処置が必要です。
当院では、できるだけ治療後に痛みを軽減するために痛みが出る可能性のある治療した後は、痛み止めを処方するようにしています。特に根管治療を行った後は、痛みが出る可能性はあることを患者さんに丁寧に説明するようにしています 。治療後に痛みが強くなった場合は、早めにかかりつけ歯科を受診してください 。むし歯の治療後の痛みは一週間ぐらい続くことがあります。 痛みの強弱にもよりますが二週間以上経って痛みが治らない場合や食べ物を噛む時に痛みがある場合は歯根膜炎になっている可能性があるので早めに受診された方が良いかと思います。
歯科治療を行った後でも痛みが引かない場合や余計に痛みが出てきた場合、治療への不安や歯科医師への不信が生じてしまいがちかと思います。痛みが生じるとどうしても、状態が悪くなっているととらえがちですが、良い治療を行ったからこそ生じる痛みもあることをぜひご理解いただければと思います。
当院では、そのような痛みが生じる可能性がある治療を行う場合、治療前にしっかりと説明し患者さんの不安や誤解を取り除くよう尽力しております。
また、患者さんの質問も随時受け付けておりますので、治療前・治療中・治療後に関わらず、不安や疑問が生じた際にはぜひ遠慮なくご質問ください。