歯の豆知識

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大切な歯を守るための治療『根管治療』

こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。

連休も終わり、少しずつ暑さを感じる日が増えてきましたね。

疲れが出てくる頃かもしれません。

体調管理をしっかりして、元気に過ごせれば良いですね。

さて、今回は‘‘根管治療‘‘についてお話します。

まず根管治療とは一般的に「神経の治療」とも言われています。

歯は、歯茎から上の歯冠という頭の部分と、その下になる歯根という部分から構成されています。その歯根の治療になります。

むし歯が進行して歯の神経を抜かなければならなかったり、神経を抜いた後の根管(神経が入っていた管)に感染源が残っていたりして根の先に膿が溜まった状態の歯を治療することを‘‘根管治療‘‘と言います。根管治療というのは歯の土台となる部分の基礎治療ですので、この部分をしっかりと治療することで、安心して被せ物(クラウン)を入れることができます。お口の中の、歯の中のさらに細い根管(根の先で曲がっていたり、枝分かれしていることが多い)を丁寧に治療する必要があるため、どうしても来院回数や時間が多くなる治療です。

 

根管とは、歯の神経や血管が入っている歯髄と呼ばれる歯の内部のことで、歯髄は、歯全体に栄養や水分を供給しています。

そんな重要な役割を担っている歯髄の中にむし歯菌が入り込むと、歯がズキズキ痛みます。その痛みは個人差がありますが、日常生活に支障をきたす程の激しい痛みを伴うことがあります。

厄介なことに、ここまでむし歯が進行してしまうと自然治癒することはなく、放っておけば歯の内部や骨が溶けてしまい、抜歯するしかありません。この状態は、むし歯の進行度合いでいうとC3に該当します。むし歯の進行とともに治療の難易度は上がり、歯のダメージは大きくなっていきます。歯髄は歯の深い部分にあるため、歯髄まで達したむし歯は強い痛みを感じやすく、そのまま放置していても悪化する一方なので治療する必要があります。

◆根管治療の2つの処置◆

1、抜髄

神経が生きている歯のむし歯が大きくなって、歯の神経の所まで達してしまった場合、歯髄炎を起こします。熱いものを食べるとしみたり、何もしないのに痛みが出るようなひどい歯髄炎を起こしてしまった場合、炎症を抑えることが難しく、歯髄を取らなければならない処置が必要になります。この処置のことを拔髄と言います。また、むし歯がなくても歯周病の治療やブリッジと言われる被せ物を装着するなどの目的により、抜髄を選択しないといけない場合もあります。

2、感染根管治療

むし歯が深くなり歯髄炎を起こしていてもそのまま治療しないでいると、歯髄の組織が細菌により殺されてしまいます。こうなると歯髄の細胞による免疫力が失われてしまっているので、根管内で細菌がどんどん増殖し、むし歯菌や歯周病菌だらけになります。

また、すでに神経を取った歯でも、根管内に細菌が侵入すると、同じような状態になります。

感染した細菌が根の管の中から歯を支える骨の中へ感染が広がっていき、根尖性歯周炎という病気を引き起こします。根尖性歯周炎になると、歯茎が腫れて、咬合痛(咬んだ時の歯の痛み)、自発痛(何もしなくても、歯が痛むこと)が出たり、骨が溶けて歯がぐらぐらになり、ついには抜歯してしまわないといけない状態になります。

感染根管治療とは、根管の中の細菌や汚染物を取り除き、根の先にある炎症を抑えていく治療です。

抜髄と大きく違うことは、すでに細菌に感染してしまっている根の状態から無菌的な状態を作り出していかなければいけないので、処置の難易度が上がり、成功率も下がります。

◆根管治療の流れ◆

①歯の神経の除去、以前詰めた薬剤の除去(根管治療1回目)

局所麻酔をし、歯を削る機械を使ってむし歯を除去しつつ、神経の上に被さっている硬い歯質を削ります。

歯質が削れて歯の神経が見えたら、次にファイルと呼ばれる針のような特殊な器具を使って神経や以前詰めた汚染された薬剤を取り除きます。歯の根の中は空洞になっているので、そこに薬を入れて仮の蓋をし、時間を置いて根管を消毒していきます。

麻酔をしてるため、ここまでの治療で痛みを感じることはありません。

ただし、神経がない場合(感染根管治療の場合)には麻酔をせずに治療することもあります。

②根管拡大(根管治療2回目〜4回目位)※おおよその目安です。

1回目で神経や汚染物を取り除いたらおしまいではなく、最終的には根管を清潔にして、薬剤を詰めることを目的としています。

そのために根管拡大をしていきます。根管は一本の歯に対して複数本あり、前歯では1〜2本、奥歯では3〜4本に分岐しています。分岐した根管をそれぞれ拡大していく必要がある為に時間が掛かります。

③根管充填(根管治療3回目〜5回目位)※おおよその目安です。

根管拡大により根管が清潔な状態に出来たら、薬剤を詰める根管充填を行います。

根管の充填を行う理由は、根管内が細菌で再感染するのを防ぐためです。拡大した根管の穴の大きさを測り、根管にピッタリ合う薬剤を詰めていきます。

根管治療は歯の中の根を治療する為、とても繊細に治療しなければいけません。

そのために時間は掛かりますが歯を長持ちさせるには、しっかりとした根幹治療を行う必要があります。色々な細菌が感染源となり、根管に炎症引き起こしてしまいます。ご自身の大切な歯を守るためにも根管治療はとても重要な意味を持つ治療法なのです。

◆根管治療のデメリット◆

根管治療にはどのようなデメリットがあるにでしょうか?

「歯を残すというだけで大きなメリットだけあるのではないか!」と思われるかもしれません。

しかし、根管治療にもデメリットはあるのです。

・歯が脆くなる

根管治療の最大のデメリットは、歯が脆くなることです。歯髄は神経だけでなく、血管も通っており、歯に栄養を与える重要な役目を持っています。

しかし、細菌感染により歯髄が炎症を起こした場合、汚染した神経を取り除く必要

があります。つまり歯の神経を取り除くことは、歯に栄養分を届けることが出来なくなってしまいます。分かり易く言うと、枯れ木のようなものです。

歯の栄養は歯からだけではありませんが、歯髄を失うことで受ける影響は大きく、歯の寿命にも影響してしまいます。栄養分が不足している歯は脆くなり、硬いものを噛んだ時などに歯が割れてしまう恐れがあります。歯が割れてしまうと、最悪歯を抜かなければならなくなってしまいます。

・痛みなどを感じなくなる為、異常を自覚しずらくなる

歯の神経を取ってしまうと痛みから解放される分、知覚を失ってしまいます。

痛みを感じることはすなわち異常を感じ取ることですが、歯の神経を失ってしまうと歯の内部でむし歯などになっていても痛みを感じないため、自覚症状を感じることがほとんどありません。気が付くと被せ物の中でむし歯が広がり、大掛かりな治療が必要になってしまう恐れがあります。

・治療回数、治療費が増える

根管治療は、根の中がきれいになるまで何度か通院しなければいけません。そのため、治療費もかかってしまします。根の治療は途中で中断すると、まだ残っている細菌が再び増殖していつまで経っても根管治療が終了しません。歯を残す為にも最終的な薬を詰めるまでは勝手に通院を中断せず、きちんと根管治療を受けなければいけませんが、その分時間と費用も必要になります。

しかし定期メンテナンス(定期的にご来院いただき、歯のクリーニングを行うこと)によって、早期発見、早期診断、早期治療が出来る場合があります。

また、再発・再治療を最小限にするために当院では精密根管治療を行なっています。

編集者 医療法人フォレスト 長野フォレスト歯科 理事長 藤森 林