歯の豆知識

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垂直感染・水平感染とは?

こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。

年度末になり、皆さん忙しい日々に追われているかと思います。

慌ただしい中で、体調を崩されていませんか?

 

今回は『垂直感染・水平感染』についてお話したいと思います。

親から子供へと感染することを「垂直感染」と言います。

それに対して、夫婦間や友達同士で感染す場合を「水平感染」と言います。

感染する病気というと、近年では新型コロナウイルス感染症、毎年のように聞くインフルエンザなどが身近ですが、これらは流行時に一気に感染者は増えますが、ほとんどの人が回復し、ウイルスは体内からいなくなります。

しかし・・・歯周病に感染してしまうと一生のお付き合いと言っても過言ではありません。

 

歯周病原菌の家族感染?

皆さんも一度は聞いたことのある歯周病はサイレントディジーズ(静かなる病気)と言われ、無自覚のまま進行し、治療をしても歯周病原細菌は常在菌として口腔内に棲み続けてしまいます。

そのため、本人が気付かないうちに、家族や周囲の人などに移してしまうこともあります。しかし、すぐに症状が現れるものではありません。歯周病菌は、感染後常在菌として口腔内で生息し続けます。やがて、子供が大人になると口腔内の清潔状況、菌の繁殖状況などにより、歯周病の症状が現れ始めます。中には若いうちに症状が現れる「若年性歯周炎」というものもありますが、主には35歳前後からその症状を感じ始め、50代以降では歯を失うなどの重症化することが多い病気です。

歯周病は一度感染すると、お口の中からその菌を取り除くことはできません。そして、若いうちに感染しても、症状が出るまで感染していることに気付かない恐れのある恐ろしい病気と言えます。歯周病の基本的な治療法は、そもそもの原因である歯垢や歯石を除去することで、歯周病菌の住処を無くし、菌の数を減らすことで症状の進行を緩めるための治療を行います。歯と歯茎の内側深くに歯石が付いている場合、ルートプレーニングと言って縁下の歯石を取る処置を行うことで、歯周病でできたポケットの内側まできれいにしていきます。歯周病菌が少なくなると、歯肉は少し元気を取り戻し、徐々引き締まってきます。

ただし、歯周病治療に出遅れてしまうと症状が進み、歯が長く見える歯槽骨の吸収が始まります。これは歯周病によって顎の骨が溶け出す症状で、こうなってしまうと溶けてしまった骨を取り戻すことはできません。

歯周病の治療は早ければ早い程良く、定期的に繰り返し歯周基本治療を繰り返すことが重要です。歯周病は一旦症状が出てしまうと、完治は難しい病気です。治療により、進行を緩めたり歯肉を引き締めたり、細菌の数を減らすことは可能です。

 

むし歯菌は垂直感染?

一般的に人の口の中には約300~700種類の細菌が存在していると言われています。歯をよく磨く人で1000~2000億個、あまり歯を磨かない人では4000~6000億個、さらにほとんど磨かない人では1兆個もの細菌が生息していると言われます。この中で善玉と言われる細菌は、口の中へ悪い菌が入り込むとそれを食べるなどして、口の中の環境を整えようとしてくれます。

一方、悪玉と言われる菌の一つであるむし歯菌は、糖分を食べてプラーク(歯垢)を作り、これが出す酸によって歯という硬い組織を溶かし、むし歯になります。このむし歯は、始めの頃は歯の色が白濁色や黒褐色に変わる程度ですが、放って置くと次第に溶けて穴が開きます。そこに食べ物が詰まったりすると、痛みを感じるようになり、最終的には歯髄(神経)まで侵されてしまいます。むし歯はミュータンス菌等による感染症なのです。

では「いつ、どこで」むし歯菌に感染するのでしょうか?生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、むし歯菌はいません。ミュータンス菌は、歯などの硬い組織に付着するのが得意な細菌です。そして「約1歳半から2歳半の間」を「感染の窓」と言います。これは離乳食が始まり、親が自分のスプーンで食べさせたりする日常生活から起こってきます。

つまり、親の口の中が汚れていて、親が子供に食べやすいように噛んだ食片を与えたりすると、むし歯菌も同時に与えることになります。唾液を通してミュータンス菌がうつり、むし歯へと発展していきます。むし歯菌はいったん定着すると、非常に頑固に口の中に住み着くため、歯ブラシだけの清掃では取り除くことが困難な場合があります。その際には、歯面をきれいに器具を用いて清掃し、フッ化物を塗布したりします。

子供のむし歯の治療では「歯磨きをしっかりする」「お菓子やジュースは続けて飲ませないように」などと言われていますが、子供自身だけでなく親も自分自身の口の中をきれいに心掛けることが大切です。親から子供へ食べ物を介してのスキンシップは大変重要なことです。

どんなに気を付けていても、むし歯菌が子供にうつる可能性をゼロにすることは不可能です。感染リスクを減らすためにも小さなうちから歯磨き習慣をつけさせましょう。周囲の家族も正しい歯磨きや歯科の定期検診に行き、むし歯菌が増えないよう口腔ケアをすることが、子どもへの感染リスクを減らすことに繋がります。

 

編集者 医療法人フォレスト 長野フォレスト歯科 理事長 藤森 林