歯の豆知識

knowledge

歯の神経(歯髄)を保護する治療

こんにちは。長野フォレスト歯科の添野です。

体調不良での予約の変更・キャンセルが増えています。

まだ当分暑さが続くかと思われますので、皆さん体調を崩されないように十分お気を付けて、この夏を乗り切りましょう!

今回は歯髄(歯の神経)を守る治療についてお話したいと思います。

歯髄は、歯の最も内部にある神経や血管がある部分で、歯に加わる様々な刺激を感知する感覚機能やむし歯菌に抵抗する免疫細胞などの防御機能があります。

歯髄には、神経と歯に栄養や酸素を運ぶ血管が通っています。

歯髄はとても敏感な組織で、刺激や細菌感染に弱く、むし歯や怪我などで傷付くと、歯髄は死んでしまいます。

むし歯が大きくなって「痛み」が出てきてしまったら、神経を取る必要が高まりますが、「凍みる」程度であれば神経を取らずに済む可能性は十分にあります。 ⇨ 

そして、歯髄が死んだ歯は脆くなります。(※歯髄が生きている歯も、死んでいる歯も、歯の質自体は変わらないという考えもあります。しかし、歯髄が死んだ歯は生きている歯よりも修復時に削る量が多くなるため、歯髄が死ぬと寿命が短くなると言っても良いかと思います。)

歯を失う原因には、歯周病やむし歯、外傷があります。そして最多の原因は、歯根破折と言われています。

この歯根破折を生じた歯のほとんどは神経のない歯(失活歯)であり、過去にむし歯などが原因で神経を取る処置(抜髄処置)がされています。抜髄処置や根管治療をされた失活歯は、歯質が健全歯と比べて大きく失われているため、歯根破折のリスクが高く、相対的に歯を失うリスクも高くなります。また、歯を失う2番目の原因である歯の根の病気(根尖病巣・根尖性歯周炎)も、抜髄処置や根管治療をされた失活歯で生じる問題です。1番目の原因である歯根破折と合わせると、喪失歯の7割以上が神経のない歯であり、歯を失わないためには歯髄を守ることが重要であると言えます。

歯の寿命は、神経を保存した方が圧倒的に長持ちします。

しかし、むし歯が神経の近くまで進んでしまった場合は、神経の保存が難しくなる場合も多くあります。出来る限り神経を保存するためにも、神経(歯髄)の保護処置が重要になってきます。

大きな穴が開いたむし歯を削る時、むし歯の部分とそうでない健康な部分を正確に区別し、むし歯のの部分だを確実に削り取る必要があります。むし歯の部分を取り残すと、その部分からむし歯が再び拡大する恐れがあるの一方、取り残しを恐れてむし歯を削り過ぎるのも問題です。健全歯質は出来るだけ削らない方が歯を丈夫に保つことが出来ますが、歯髄が露出すると抜髄は避けられません。歯の治療を繰り返せば繰り返す程、歯の寿命は短くなります。むし歯の進行は、歯科医院での定期メンテナンスはもちろん、日々の歯ブラシや清掃補助用具をしっかりと使用することで、それ以上むし歯が進行しないケースはたくさんあります。そうなると今削って治療する方が良いのか考え判断します。

治療する側も、お口の将来的な健康のために可能な限り歯髄を生きた状態で残したいと思っています。

むし歯治療で、むし歯の所を削ってセメントを詰める処置という説明や治療を行ったことはございませんか?

歯髄がダメージを受けた時は、出来るだけその被害を最小限にして、歯髄を保護する治療を行います。

□歯髄が見えそうな時

むし歯が深くまで進行している場合は、歯髄のぎりぎりまで感染した部分を取り除きます。削ったために、時には歯髄の一部が見えてしまうこともあります。

そのような場合、歯髄の状態が良ければ、むし歯を取った穴に薬を詰めて、外部からの刺激を遮断して歯髄を保護する薬剤を置く『覆髄(ふくずい)処置』をして、刺激や細菌から歯髄を守り、何とか歯髄を保存します。

□歯髄の一部にまで感染が進行している時

歯髄はダメージを受けると、生き残った歯髄を守ろうとして新しい象牙質を作り出す働きがあります。

むし歯が歯髄まで広がって、一部炎症を起こしている時でも、この歯髄の働きを活用して、歯髄を救う治療を行うことがあります。

感染部分を取り除いた後、『覆髄処置』をして歯髄を保護しながら、新しい象牙質ができるまで様子を見ます。

しばらく経過観察が必要なので、最初は痛みが出る可能性がありますが、うまくすれば歯髄を生きたまま損なわずに修復することが出来ます。

ここまで手間暇かけても、歯髄は残す価値があるということです。

実際に歯髄に細菌感染が起こっているかどうかの確認は難しいため、歯の診査による歯髄炎の症状で、判断することになります。

また、覆髄処置後は充分な期間の経過観察をして、歯髄炎の症状の経過の確認が必要になります。

患者さん一人ひとりの口腔内の状態、体質、生活習慣などをある程度把握しながら、治療と予防を担当させていただければと思います。

まずは、歯髄までむし歯を進行させないように、日々の予防をしっかり行っていきましょう!

 

編集者 医療法人フォレスト 長野フォレスト歯科 理事長 藤森 林